28 お兄様がさらに挙動不審ですわ
意識が覚めてから、
あっという間に1週間が過ぎた。
お医者様から「もう動いてもいい」
と許可が出たので、
今日は久しぶりに公爵邸の中庭で
お茶を楽しむことにした。
陽光が差し込む庭で、
風にそよぐ草木を心地よく眺めていた。
長い間寝ていたせいか、
庭の景色が少し新鮮に映る。
「ねえ、アニー」
紅茶を一口飲んだ後、
ぽつりと話しかけた。
「最近のお兄様、なんか変じゃない?」
アニーは私の質問に、
少し首を傾げて答える。
「そうですか?」
「なんか、毎回言葉に
詰まっているような気がするの。
私に何か言いたいことが
あるんじゃないかしら?」
そう言いながら、
ここ数日のお兄様の行動を思い返す。
舞踏会での仕事や私の看病で
溜まってしまった仕事を解消するために
忙しい日々を送っているお兄様。
朝と夜には必ず私の様子を見に来てくれる。
その時にだいたい一回は
「レナ…あの…」と言葉を詰まらせて
「やっぱりいい」と話題を変えていた。
アニーは微笑んで
「そうですね…そろそろ
家庭教師を再開させてもいいか、
とか聞いてくるのかもしれませんよ」
と冗談めかして言った。
「えー、そんなことかなぁ…」と、
私が肩を落とすと、
アニーは真剣な表情に戻って言った。
「冗談です。」
「えー真面目に考えてよー」
と私は笑いながら答えた。
「でもね、
せっかく動けるようになったんだから、
告白大作戦を実行したいの!」
1週間ベッドにいる間
アニーと二人で、
告白のシチュエーションについて
あれこれと話し合っていた。
でも、まだピンとくるアイデアが
出ていないのが現状だ。
アニーはちょっと疲れたような表情をして
「またその話ですか…
もう夕食時とかで手を打ちませんか?」
とため息をつく。
「だめよ!それにお兄様の女性の好みも
知りたいわ。それによってシチュエーションもかわるでしょ?ラファエルの妹と一緒にいたのは誤解だったし、お兄様がどんな女性がタイプなのか、探らなくちゃ!」
そう言いながら、私は少し考え込む。
意識を取り戻してから3日目に、
ラファエルの妹のことをアニーに聞いた。
すると、彼女はすでに第二王子と婚約していると聞かされ、私は自分の早合点に呆れた。
けれど、そのおかげで記憶が戻りトラウマも克服できたのだから、結果オーライということにした。
「お兄様って、
これまで女性と親しくしていたこと
なんてないわよね?」
アニーは少し困った顔をして
「そうですね…」と答えた後、
何か言いたげな表情を浮かべていた。
「なによ?言いたいことがあるなら、
言ってちょうだい」
そう言うと、またアニーは少し気合を入れたようにしていった。
「唯一お話しされるのはレナ様ですから、
公爵様にとってのタイプは……
レナ様なのではないでしょうか?」
「それはないわ、よく話すのは妹だからよ」と私は笑って軽く流すと、アニーは
深い溜め息をついた。
「とにかく、アインにでも
それとなく探ってみてくれない?」
とお願いすると、アニーは諦めたように
「わかりました…」と返事をした。
話し合っているうちに、私は突然ひらめいた。
「そうだ!エリザベスたちに聞くのはどうかしら?」
するとアニーは助かったと言うように
「それはいいですね!」
と食い気味に言った。
「まだ病み上がりですし、公爵様が心配なさると思うので、今日の夕食の時に公爵様に直接お伺いしたほうがよいかもしれませんね」
と提案してくれた。
「エリザベスたちがどんな案を出してくれるか楽しみだわ!」
私はすでに次のお茶会に対する期待に胸を膨らませていた。
ーーーー
その日の夕食は、ベッドの上ではなく久しぶりに大きな家族用ダイニングルーム。私の体調を気遣ってか、いつもより彩り豊かな食事が並べられていた。
お兄様は
「久しぶりにここで一緒に食事ができて嬉しいよ。元気になってよかった」
と微笑んでくれた。
「お兄様やアニー、アイン、
そしてお医者様たちのおかげですわ」
と感謝の言葉を口にすると、
少し申し訳なさそうな
顔をしながら、
「最近は仕事が忙しくて、
あまり面倒を見れなかったけどな…」
「でも、朝と夜は必ず様子を見に来てくださったでしょう?嬉しかったです。」
と答えると、お兄様は少し顔を逸らしながら「…それならよかった」
とつぶやいた。
食事が一段落したところで、
私はお兄様に本題を振った。
「ところでお兄様!
エリザベスたちとお茶会を開きたいんです。」
お兄様は少し驚いた様子で
「まだ意識が戻って1週間しか経ってないのに、大丈夫か?」
と聞いてきた。
「もう元気ですし、お茶会なら大丈夫ですわ。
アニーもずっとそばにいてくれるますし、
公爵邸で開くので何かあればすぐに休むこともできますわ」と言うと、
「でもなあ、舞踏会も病み上がりに連れていったばかりに…」
と少し暗い顔でお兄様は考え込んだ
「もう本当に元気なんです!
それに前回もお茶会は大丈夫でしたわ!
絶対に無理はしないから…お願い、お兄様!」
そうお兄様の目を見つめていった。
お兄様は少し考えたあと
「絶対に無理はするなよ」
と言った。
「ありがとう!お兄様!」
私は嬉しさに満ちた笑顔を浮かべ、
お兄様を見つめた。
お兄様はまた顔をすこししかめながら
咳払いをして話題を変えた。
「ところで、来週から領地で仕事をしようと思っている。
公爵領の屋敷に1ヶ月ほど行くんだが、
レナはどうする?」
「領地に!?もちろん行きますわ!」
私は思わず声を上げてしまった。
領地の公爵邸は王都の屋敷の3倍の広さで、
乗馬やボート遊びもできる。
畑や樹木に囲まれて、1日中飽きることがない。両親が健在だった頃、私はそこで過ごしていた。お兄様の母(継母)と折り合いは良くなかったので、屋敷の外で父やメイド一緒に遊んでもらっていた、楽しい記憶がある。まだ両親が生きていた頃は、そこで暮らしていた。年に2,3度は領内の仕事をするためにお兄様が帰るのでそれに付き合っていたが、もうそんな時期になっていたのかと思うと、長い間寝てしまったような気がした。
「そうか。それなら体調を見てから、
出発の時期を決めよう」
とお兄様が付け加た。
その夜私はエリザベスたちにお茶会のお誘いの手紙を書いた。またエリザベスたちとお茶会で恋バナができる、そして今回は自分も少し話題に参加できると思うと、私の心は踊った。
恋バナのネタはないけど、恋バナしたいと思う今日この頃です。
今回もお読みくださりありがとうございます⭐︎
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