22 私の人生にもう悔いはないですわ
記憶を取り戻してから
私は両親の死後に、
過労で倒れてるまでに
仕事しているお兄様のことを
自分が守らなければと思った。
前世の私は、
辛い時に誰にも十分に甘えられず、
誰からも手を差しのべてもらえず、
その結果死に至ってしまった。
その同じ苦しみを、自分のそばにいる誰かが感じているのだと思うと
居ても立ってもいられなかった。
最初は、過去の自分自身を救えなかったから、お兄様を救うことで、
過去の自分を救おうとしていたのかもしれない。
しかし、お兄様のそばにいるようになって、
私は純粋にお兄様を助けたいと
思うようになっていた。
お兄様は、それから数週間たって、
なぜか私に優しく接してくれるようになった。
それは嬉しかったけれど、私はただお兄様を助けたいと思っていただけだったので、
自分に対する態度が変わったことに、
その時はそこまで気にすることはなかった。
しかしそれから6年間ずっと、
お兄様は私を気にかけ、
どんなことからも守ってくれた。
私はお兄様と自分の間に、
たくさんの新しい思い出が
積み重なっていくのが、うれしくなっていった。
しかしそれはあくまで家族としての好意だと決めつけて、今の今まで疑うことをしなかった。
それが間違いだったと気づいたのは
まさに先日、高熱で倒れるまえ、
記憶をなくてしまったその日だった。
その日、私は兄の騎士団の見学に行った後、
本を借りるために、
王宮の図書館に寄っていた。
気になる本がたくさんあって、
どれかを借りるか吟味していると、
閉館ギリギリになってしまった。
アニーから兄が中庭で待っていると聞き、
急いで向かう途中、
舞踏会で話していたあの女性、
ラファエルの妹さんとお兄様が
二人仲良く話す姿を
見てしまった。
お兄様の前では何事もなかったかのように振る舞い、
馬車で公爵邸に帰り、私は自室に戻った。
しかし、お兄様がほかの女性といる光景が何度も何度もよぎり、
私は胸が締め付けられた。それは失望と嫉妬からくるものだった。
その時、私はお兄様に対して、
前世のレンに抱いていた感情と似た、
恋愛としての好意を抱いていることに気づいた。
その時の感情は前世でレンが他の女性といるところを見て絶望した感情に非常に近いものだった。
お兄様を愛している。
でも私は愛しても、絶対に愛されない。
その思いがぐるぐると頭を回り続けた。
胸が強く強く締め付けられ、呼吸が早くなり、
頭は真っ白になった。
私の意識は再び遠のいた。
そして次目覚めたら、全ての記憶を失ってしまっていたのだ。
お兄様を男として好きとだと気づいたこと。
だとしても私は愛されることはないということ。
過去のトラウマによる苦悩。
全てが重なり、私の頭や体は限界に達してしまったのかもしれない。
この時間に戻ってきたのは、
私が過去を再び克服するためなのではないだようか。もしくは死ぬ前に、後悔がないように、過去とけりをつけさせてくれようとしてるのではないだろうか。
前世の自分のトラウマと
今の気持ちに整理をつけるために。
私は執務室で倒れたお兄様を慌ててベッドに運び込もうとしている執事たちに混ざって、
お兄様の手を握った。
そして、ベッドに横たわるお兄様のそばに再びそっと近づき、私同じ銀色の髪の毛を撫でた。
「前世に行ったおかげで、
私はもう一度誰かを好きになる勇気を持てました。」
「次にもしまた私が今の私の世界で目を覚ますことができたら、伝えたいことがあります。」
その瞬間、お兄様の目がかすかに開いた。
誰にも見えないはずの私の目と
ほんの一瞬だけ視線が合った気がした。
私は堪えきれず、長い間涙を流し
また再び意識が遠のいていくのを感じた。
次に目を開けると、見知った自室だった。
公爵邸の、ついこの間まで使っていた部屋だ。
夢かもしれないし、
最後の走馬灯かもしれない。
目の前にはお兄様が立っていた。心配そうな顔で、私を見つめている。
「お兄様…」
私は、今度こそ伝えたい。
夢なら、いやもし夢でも、
これが死ぬ間際の走馬灯であっても
どうしても伝えたい。
伝えなければ前世のように、
死んでも死にきれない。
そう思った。
「お兄様…好き…です。」
「ずっと、一緒にいたい…」
最後の力を振り絞ってそう呟くと、私はまた意識を手放した。
再び眠りに落ちる前、私は自分が満足げに微笑んでいるように感じた。
とうとう٩(●˙▿˙●)۶
ここまで地の文が多くてすみませんでした。
次回からまた会話増えます!




