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15 舞踏会の開幕だ(ヴィンセント視点)




レナがドレス姿で現れた瞬間、

僕は思わず息を呑んだ。



そこに立っていたのは、

いつもの妹ではなかった。

まるでこの世のものとは思えないほど美しい、

別世界から来たかのような輝きを放った存在だった。

深いコバルトブルーのドレスが、

レナの白く透き通るような肌をさらに引き立て、

夜空に輝く星のように銀糸が煌めいていた。

そのドレスの美しさが、レナ持つ本来の魅力を何倍にも引き出している。




レナの銀色の髪は、柔らかくウェーブがかかり、月光を浴びたように輝いていた。

まるで、空に浮かぶ雲が夜空に映えるように、

ドレスのコバルトブルーと絶妙に調和していた。

そして、その髪の下から覗くスカイブルーの瞳が、

ドレスの色に負けないほど澄んで輝いていた。





彼女がこちらを見て微笑むたび、

私の心臓は一瞬止まったかのように鼓動を遅らせ、

次の瞬間には猛烈な速さで動き出す。

これほどまでに美しい女性を、僕は今まで見たことがなかった。




目の前に立つレナは、天使のようだった。

体全身に衝撃が走った。

あまりに美しすぎて、正直なところ、もう舞踏会に行かせたくないとすら思ってしまった。

他の男に、この姿を見られるのは許せない。

彼女の美しさを独り占めしたい。そんな身勝手な思いが胸の中に湧き上がってきた。




「お兄様……とても素敵ですわ」

レナの口から発せられたその言葉に、

俺はどう反応していいのか分からなかった。

レナは俺を褒めてくれているのはわかった。

いつもなら飛び上がって喜ぶところだが、

今はそんなことはどうでもよいと感じるくらいだった。

俺は、ただただ彼女の美しさに圧倒され、言葉を失っていた。




この美しさを目にした誰もが、彼女に心を奪われるにちがいない。

ドレスを纏う前からそれはわかっていた。

しかしドレスアップをしたレナは、

もうこの世の全てを魅了してしまうような美しさだった。

レナが他の男に惹かれてしまったら、

胸が張り裂けそて死んでしまうのでないか気持ちになった。





「お兄様……もしかして、このドレス、似合っていませんか?」

彼女がそう不安げに聞いてくるのを見て、

私は一瞬だけ視線を逸らし、

落ち着きを取り戻そうとした。

似合ってないわけない。綺麗すぎるのだ。

しかしそんなことレナに対して

直接言えるわけもなく、

「いや……とても似合っている。綺麗だ」

とだけ言って、また目を逸らした。




馬車に乗り込んでからも、

レナの姿を直視することができなかった。

馬車の窓の外を見ながら、心の中で何度も自問自答する。

どうしてこんなにも彼女に対して強い感情を抱いてしまうのか。

妹だ、ただの妹だ。

そう繰り返し自分に言い聞かせても、心はまったくいうことを聞いてくれない。



レナは、私の視線を気にすることなく、

いつものように微笑んで座っている。

普段通りの彼女の振る舞いが、

なぜかますます彼女を可愛らしく見せ、

ますます僕の心を揺さぶってくる。

彼女の何気ない仕草、ふとした瞬間の表情――その全てが、私の目には眩しく映った。



しかし、自分を失っている場合ではない。

舞踏会はもうすぐだ。

何よりも今俺がしなければならないのは、

レナに余計な虫がつかないように守ることだ。

特にラファエルのような女たらしには、絶対に近づかせたくない。




私は、レナに一言だけ忠告することにした。

これ以上、言葉を選んでいる時間はない。

「……舞踏会では俺のそばを離れるな。

ダンスに誘われても、嫌なやつからの誘いはちゃんと断れ。

俺がそばにいれば大丈夫だとは思うが……」



レナは何も疑うことなく、優しく微笑んで

「わかりましたわ」

と答えた。

レナのその素直な言葉とはにかむ笑顔に、

少し安心したが、自分の私情を押し付けている気もして

罪悪感が胸をよぎった。



馬車は着々と王宮へと向かって進んでいく。

胸の中では、このままレナをこの舞踏会に送り出して本当に良いのか、

何度も疑問が浮かんでいた。

だが、レナが記憶を取り戻すきっかけになるなら、これほど良いことはない。

彼女が幸せな未来をつかむためにも、

見守るしかないのだと自分に言い聞かせた。



王宮に到着すると、舞踏会へと続く大階段が私たちを待ち受けていた。

私はレナをエスコートし、レナが転ばないように細心の注意を払い、着々と階段を進んだ。




だが、会場に足を踏み入れた途端、私の不安は現実となった。

皆の視線が、一斉にレナへと向けられたのだ。





それも当然だろう。

俺の感情的な色眼鏡を考慮しなくても、レナは本当に万人を魅了する美しさだ。

レナは、かつて父が一目惚れしてすべてを捨てかけたレナの母親にそっくりでもあるらしい。

誰もを魅了する美しさは母親ゆずりなのだろう。

この場にいる全ての人間が彼女の美しさに目を奪われるのは避けられなかった。




その瞬間、誰もがレナを見ているのだという事実に苛立ちを感じ、

レナに向けられる視線を思いのかぎり睨みつけた。

男たちがレナに注ぐ視線は、うっとりと見惚れるようなものばかりだった。

レナが注目を浴びることは分かっていたはずなのに、

その現実を目の当たりにすると、理性を保つことが難しくなった。





会場を進んでいくと、案の定、ラファエルが意気揚々と現れた。

「やあ、ヴィンセント! ついに来たか。

お前が舞踏会に出るなんて珍しいと思っていたが、

誰を連れてきたかと思えば……なんと美しいお嬢さんだ」




ラファエルは、いつもの調子で軽口を叩きながら、

レナをじろじろと見つめた。

その視線に、私は一瞬で不快感を覚えた。




「一曲僕とどうかな?」

と、ラファエルがニヤニヤしながらレナに手を差し出してきた。

「妹はお前とは踊らない」

と、私は即座に返した。何を考えているんだ、こいつは。





だが、ラファエルは意に介さず、

さらに笑みを浮かべて

「僕は君に聞いてるんじゃなくて、君の妹さんに聞いているんだが?」

と挑発的に言ってきた。





僕はますます苛立ったが、

レナがどう返事をするかに気を取られているうちに、

レナは一瞬だけ黙り込み、次の瞬間、思いも寄らない行動をした。




「……わかりましたわ」

と言って、ラファエルの手を取ったのだ。




何を考えているんだ、レナは。

嫉妬なのか、それとも怒りなのか、胸の中が一気に暗い感情で支配される。

レナが他の男と踊る姿を想像するだけで、気が狂いそうだった。

しかしレナの希望を叶えるために、レナの幸せのためにここにきたのだ。

レナの意向は絶対だ。



僕は暗い気持ちをなんとか抑え込もうと、

近くにあったワインを手に取り、一気に飲み干した。




ブックマークしてくださった方ありがとうございます⭐︎

更新のたびに読んでくださる方々も

本当に感謝です٩(●˙▿˙●)۶

頑張って完結させたいと思います!

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