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14 いざ、舞踏会へ

舞踏会当日は昼から、

メイドのアニーと他3人のメイドたちによって舞踏会の準備が始まった。

まずは湯船に浸かり、髪と肌の手入れが丁寧に行われる。

今日は何もかもが特別だ。

温かいお湯に浸かりながら、舞踏会に参加する実感がじわじわと湧いてきた。

部屋に特別に用意され飾られたドレス、宝石、化粧道具、それらをみて胸が少しずつ高鳴るのを感じる。




「レナ様、今日はこの国一美しい令嬢に仕上げさせていただきますね。

もともと本当にお美しくいらっしゃりますので、腕が鳴りますわ。」

とアニーが微笑む。

「そんなことないわ、いつもアニーのおかげよ。今日もお願いね。」

と私は答えながら、ほんの少し緊張している。




髪は丁寧に乾かしブラッシングされ、

瞳や頬の色味が際立つようにメイクが施される。

メイクを終えた後、鏡を見るとそこに映る自分が別人のように見えた。

澄んだスカイブルーの瞳がさらに輝きを増し、

滑らかな肌がきらりと光る。

髪はサラサラで艶やかさがましており、ゆるやかにウェーブが巻かれている。

髪飾りがキラキラと輝く。

お兄様が発注してくれた髪飾りは宝石が至る所に散りばめられていた。

メイドたちの手際の良さや仕上がりに驚きながら、

自分が舞踏会に参加するのだという実感が押し寄せてきた。



そして、いよいよドレスの支度だ。

銀糸が施された美しいコバルトブルーのドレスが目の前に広げられ、

思わず息を飲んだ。デザインはお兄様にみせてもらっていたが、

いざ目の前にすると、その美しさは言葉にできないものがあった。

まるで夜空に浮かぶ星々のような繊細な刺繍が、ドレスのすそから胸元にかけて広がっている。



「このドレス、レナ様にぴったりですわ。

これを着たら、きっと誰もが美しさに目が釘付けになりますね」

とアニーが言う。

「本当に素敵なドレスね……」

と私は小さな声でつぶやいた。

ドレスを着込むと、メイドたちがコルセットをしっかり締めてくれた。

息を詰めるほどのきつさに一瞬だけ息苦しさを感じたが、我慢しなければならない。

アニーや他のメイドの苦労を無駄にしないよう、

少しでも綺麗な姿にならなければと思い、歯を食いしばった。




ようやく準備が整った頃、外はすっかり夕方になり、

舞踏会への出発の時が迫っていた。

「お兄様はもう準備はできたのかしら……」

と少し緊張しながらドレスの裾を整え、居間へと向かう。

ドアを開けると、そこにはタキシード姿のお兄様、ヴィンセントが立っていた。




私は思わず息をのんだ。

お兄様はコバルトブルーと銀を基調としたタキシードを身にまとい、

その姿はまるで絵本の中から飛び出してきた王子のようだった。

ヘアメイクとうすいメイクをした顔には普段以上の凛々しさが漂っていた。

お兄様の持つ本来の美しさが一層引き立っていた。




「お兄様……とても素敵ですわ」

心の中で強く鼓動が鳴り響いていたが、

それをコルセットのせいだと自分に言い聞かせた。

コルセットを締めてもらいすぎてきっと息が上がっているのだ。




しかし、私が出てきてからお兄様はなぜかいつものように落ち着いた様子ではなく、

明らかにそわそわとしていた。

もしかして、お兄様の思い描いた理想のドレス姿ではなかったから

落胆しているのだろうかと心配になった。




「お兄様……もしかして、このドレス、似合っていませんか?」

私は不安になり、思わず聞いてしまった。

お兄様は一瞬だけ視線を逸らし、少し照れくさそうに答えた。

「いや……とても似合っている。綺麗だ」

その言葉に安心はしたものの、

すぐに顔を逸らすお兄様のお世辞なのではないかという一抹の不安が残った。





馬車に乗り込むと、お兄様はさらにそわそわと挙動不審な様子を見せた。

普段は冷静沈着なお兄様が、こんなにも緊張しているのを見て、

ますます不思議な気持ちになった。

どうしてお兄様も久々の舞踏会に緊張しているのかしらと考えながら、

黙って馬車の中に座っていた。





ふとした沈黙の後、お兄様が口を開いた。

「……舞踏会では俺のそばを離れるな。ダンスに誘われても、

嫌なやつからの誘いはちゃんと断れ。

俺がそばにいれば大丈夫だとは思うが……」

お兄様の言葉に、不安だった心がすこし和らいだ。

お兄様は、私に落胆したから黙っているわけではなさそうだった。




「わかりましたわ」

と私は素直に返事をした。

私にとって、舞踏会でダンスすることはそれほど重要ではない。

舞踏会に行くのは、何か記憶を取り戻すきっかけになるのではという期待からだ。

そもそも、誰かがダンスに誘ってくるなんてことは思ってもみないことだった。

エリザベスたちと話して、おいしいものを食べて帰ってくるつもりだったのだ。





しかし、急に心に浮かんだ不安があった。

お兄様は社交界でも人気があり、

舞踏会では多くの令嬢たちから注目されるかもしれない。

それに加えてこの素敵なタキシード姿であれば、

令嬢たちからひっきりなしにダンスに誘われるのではないだろうか。

私は不安に耐えかねて、お兄様に直接聞いてみることにした。




「お兄様は誘われたらご令嬢と踊ったりするのですか?」

「俺は踊るつもりはない。そもそもお前の付き添いだし、

他の子息と少し話す以外は、ずっとお前のそばにいる」




その言葉に、私はほっと胸をなでおろした。

馬車はゆっくりと王宮へと進んでいく。

お兄様のそわそわとした姿を見ながら、

私もまた、なんだか落ち着かない気持ちで王宮に向かっていた。


お兄様はレナのあまりの可愛さに思考停止中回です(*'ω'*)



このページをクリックして読んでくださったこと、本当に感謝です٩(ˊᗜˋ*)و

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