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#4:休止か引退か言われたら迷いなく引退する俺は最後まで笑う話。


 年末年始の休暇の後、俺はもう壊れていたのかもしれない。

 何をしても虚無な日々。枠を開いたとしても心の奥底で楽しくないと思う自分。

 偽りの仮面の下、俺はどうしたらいいのかわからずに過ごすここ数日。


 ――思えば俺って、何で配信なんかしているんだろう。


 俺じゃなくても、他の誰かがいる。

 だったら俺はリスナーとしてみんなの所へ赴いてコメントを打ってお話を楽しめばいいじゃないか。

 長時間配信のガヤとして参加して思ったことの1つだ。

 その場で俺のことを知って、仲良くなった人たちの枠周りをしよう。

 正直、俺の役目はほぼ終わった。後は夜闇に任せよう。

 そして俺は徐ろに配信アプリを開き、〖今日で引退!!〗と打ち込み、枠を始めた。

 タイトル詐欺とか言われそうだけど、これは本音だ。凄く単純なタイトルだけど、いろんな意味を込めてこれにしてある。

 誰か来るかなと思いつつ1分も経たないうちに数人入ってきた。

「おっ、シャケマヨと鯵やん。また来てくれたんやな。2人同時ってことは匂わせかな……?(笑)」

『いや、ちゃうがな』

『んなわけないじゃん?』

 少し前から仲良くしてくれる年下の子たち。後輩気質なとこがありちょっと弄りたくもなる存在だ。

 その後も続々とタイトルに釣られたのか何人か来てくれた。いつも来てくれる子だったり、夜闇のところで仲良くなった人たちも。

 自枠のコメント欄に流れるのは『なんでなの?』『やめるのやだ』だったりと惜しんでくれるものばかりだ。

「ま、まさかこんなに来てくれるとはな……。みんな来てくれてありがとうだよ」

『ほんとに辞めちゃうの?』

『いきなりすぎるやん!?』

『もっと声聞きたいのに』

 珍しく止まることのないコメント。

「まぁまずね、辞めるのは本当のことだよ。……でも、配信者を辞めるだけであって、このアカウントは残るしみんなのところで楽しませてもらおうかなって」

 俺は俺のことを全うしたつもりだ。

 趣味の範囲で始めて、いろんな人と出会って、沢山お話できたのは20数年生きてきた中で最高の時間だ。今まで独りだったけど、今はもう独りじゃない。

「あっ、ごめん。今日は喋ること多いからコメントあんまり見れないかも。先に謝っとくね」

 ひょんなことから始めた配信はいつしか自分の中で趣味と化していた。

 枠を開けば誰かが来てくれて、数ある中でも俺のとこに来てくれる嬉しさ。みんなとお話する時間というのは自分自身を満たしてくれる。……はずだった。

「結論から言わせてもらうと、疲れた。いろいろバタバタあって、自分の中で考えるうちにもういいやって」

 まぁでもこれで終わりではない。

 Twitterのアカウントは残してくし、これまで通りの運用をしていく。

「休止でもいいんじゃない?って思われてるかもしれないけど、俺は辞めるよ(笑)。だってそういうキャラじゃないし。休止か引退か言われたら迷いなく引退するよ。……それが俺のやり方」

 趣味となった配信の中で決めてることがあった。

 枠に来てくれる人達同士が仲良くなって、輪が広がってほしい。

 その願いが叶ったのかもしれない。

 心のどこかでそう思って、虚無な時間が訪れていたのかもしれない。

「こんなこと言われたら怒られるけど、俺がしたいことをするだけ。したかったことが叶ったから俺はそろそろお役御免かな……。みんなとお話する時間はめちゃめちゃ楽しかった。だから次からはみんなの枠に行って楽しもうかな。……まぁ夜闇の枠に入り浸っておちょくるだけだから。よろしく頼むな」

 役目は果たした。勝手にそう思ってるだけ。

 必要とされてももう俺は必要じゃない。

「ま、もし俺のこと見かけたらよろしくな。……てことでさらばじゃ!!……またどこかでお会いしましょうね」

 最後まで流れるコメントを見ず、止められようと関係なく最後の終了ボタンを押した。

 引退するときにやってみたかったことの一つ。

 リスナーを惑わせて終わること。

 リザルトは――見れなかった。いや、見たくなかった。

「さて……最後の大仕事に取り掛かりますかね」

 ここで起きたことを俺は書き留めたくて小説投稿サイトの『なろうね』に投稿してきた。不定期だし短いし、フィクションだったりノンフィクションだったりの物語。別に誰かに見られたいとかそういうのは一切ないけど、貴重な体験をさせてもらったからには残しておきたいかなって。

 あんまりこの事実を投稿してるんだって周知はしてないけどボロクソに言われてるかもしれない。ふざけんなって。でも俺はやりたいことをやるだけだからさ、誰に何言われようと関係ない。誹謗中傷はまぁ勘弁だけど、言いたきゃ言えばいい。――その人の人生だから俺がとやかく言う必要はない。

 最後の章を書き始めて1時間くらいで書き終わった。

「まぁ誰が見てくれるかは知らんけど、初めて終わらせたな。……今まで中途半端で終わらせてきたからな」

 なろうねに投稿し始めて、初めて完結する物語が完成した。

「これで本当に俺の役目は終わったな。


 ――これでやっと俺自身の物語も終わらせられる」


 机の上に置かれている、ついこの間ホームセンターで手に入れた鋭利な刃物。

 これを自身に突き刺せば安寧の時か訪れる。

 ずっと待ちわびていたかもしれないこの時。

 ずっと逃げたかったこの衝動はやることを遂げた俺を誘う。

『さようなら』

 ずっと隠し持っていたTwitterのサブアカウントに震える手で書き残した。

 誰にも見られたくないけど見つけられたい我儘。

「こんな俺でごめんな」

 そして一気に自分自身の首に鋭利な刃物を突き刺した。


「……おい。……だね………の……かよ」

 どこからか聞こえる、聞き覚えのある声。

「今日……束……だろ」

 その声の主は間違いなく夜闇の声だ。

「おっ、やっと起きたかよ。……ったくいつまで寝てんだよ」

「あっあぁごめん起こしてくれてありがと」

「ほら行くぞ」

「ん?どこに?」

 寝起きだからか頭が回らない。

「はぁぁぁ。忘れてんのかよ。飲みに行くって約束したろ」

「ん……そうじゃん!!ごめん寝てた」

「ま、いいけどな。んじゃ行こうぜ」

 夜闇はそう言い残し、そそくさと靴を履き外へ出てしまった。

 徐ろにスマホの画面を開くと今日は週末らしい。ここ最近多忙を極めてるから全然気づかなかったけど、飲みに行くってことは明日休みらしい。

 夜闇が外で待ってるのを思い出し急いで靴を履くと外に出た。

 なんだろう。……この懐かしい感覚。

 不思議な世界に迷い込んだ気分だ。

 ふと隣を見ると夜闇は配信アプリでタイトルを入れてた。

〖推しと最推しって何が違うん?〗

 どうやら居酒屋に着くまでリスナーと討論するらしい。

 まっ、なんか楽しそうだから俺は横でガヤとして参加しますかね。


 ――俺が存在しなくてもみんなにはもっと他に、かけがえのない存在がいる。独りじゃないよって声をかけてほしい。それが俺の願い。

これから見てくれる人は初めまして、最後まで見てくれた人はありがとうございます。

何となく投稿し始めてから初めて完結まで書けました。……まぁ短いですけど。

この物語というのは事実であったり事実じゃない事だったりを混ぜながら創らせて頂きました。

自分自身が体験したことというのはとても貴重でかけがえのない一瞬。誰かとコミュニケーション取るって凄く大事だなぁって思いながら書いてましたね。

ということでまぁ、これまた初めてあとがきというのを書いているのですが難しい!!

まだまだ書くことが下手くそな自分ですけど、マイペースに投稿できて上手くなれればなぁ……。

てことでまた次の作品でお会いしましょう。最後までありがとうございました。

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