七つの力編 幸せの定義
N「ご町内の平和を守る魔法少女ななこ!
ななこはまじかるおたまを媒介して七つの魔法を使う事が出来る。
しかしそれらの力を開眼させるにはかなりの鍛練が必要とされる。
果たしてななこは七つの力全てを使いこなす事が出来るのであろうか。
頑張れ、魔法少女まじかるななこ!」
優子「今日は前に転校しちゃったお友達のころろちゃんが一緒にお食事しようって誘ってくれたの。ころろちゃんと会うの久しぶりだから楽しみ。元気かなぁ」
ころろ「ゆうこちゃん、こっちこっちー」
優子「あ、ころろちゃん!久しぶりー。待ったー?」
ころろ「私も今来た所だからー」
優子「良かったー。……って、その隣の人誰!?」
ころろ「怪しい方じゃないよ。猫耳様って言うんだけど。今日はゆうこちゃんにとてもためになるお話してくれるんだって!ねっ、教祖様?」
教祖「にゃーん」
優子「……どこからどう見ても怪しいよ。どうしてホッケーマスク手に入れる前のジェイソンみたいに頭から袋被ってるの?」
ころろ「そういえばどうしてだろうね。教えて、教祖様」
教祖「にゃーん」
ころろ「ふむふむ……。この世界はマジカルイオンが飛び交っている。マジカルイオンから身を守るために身につけてるんだって。なるほど」
優子「ま、マジカルイオン……?何それ」
ころろ「何て説明したらいいのかな、教祖様。……なるほど。特殊なイオンなのですね。この世界で奇跡のような事が起きる時にはそのマジカルイオンが作用してるんだって」
優子「でも、どうしてそれから身を守らないといけないの?」
ころろ「それはね。最近、そのマジカルイオンを悪用して世界の秩序の崩壊を目論む連中がいるらしいの。ねぇ、教祖様?」
教祖「にゃああああああん!!!」
ころろ「今、この世界はピンチに立たされているんですね!そして、それを救えるのは琉球海猫様だけなんですよね!教祖様!」
教祖「にゃあああん!にゃあああん!」
優子「……私の頭が悪いのかな。さっきからころろちゃんの言ってる事の意味が分からないよ」
ころろ「大丈夫、ゆうこちゃんも琉球海猫様から授かった脳内教の御教えを学んでいけばすぐに分かるようになるよ!教祖様、お願いします」
教祖「にゃうう。にゃんにゃん」
魔法少女まじかるななこ 第7話『幸せの定義』
優子「二時間の説明でやっと分かったけど……つまりころろちゃん。私をその脳内教っていう宗教に誘いたいわけなのね?」
ころろ「うん。そうする事がゆうこちゃんのためなの。安心して、琉球海猫様の御教えに従って生きれば、幸せになれるのよ!」
優子「私……今のままで十分幸せだよ?」
ころろ「脳内教に入れば、もっと幸せになれるんだよ!」
優子「でも私のうち、多分仏教徒だよ?よく分からないけど家に仏壇あるし」
ころろ「大丈夫!家族皆脳内教に入れるように導いてあげるから!」
優子「そーいう問題じゃないよう……。私そろそろ帰るー……。」
ころろ「待って!だったらせめて総本山を見るだけ見てみて!そしたらきっとゆうこちゃんも決心がつくはずだよ!お願い、私達お友達でしょ!?」
優子「うん……。じゃあ……そこ見たら私帰るよ?」
ころろ「うんっ。さぁ、行こー♪」
優子「こうして私はバスで三十分、更に徒歩三十分の山の奥の脳内教総本山という所に来たのだけれど……。」
ころろ「ねぇねぇすごいでしょ!?大きいでしょ!?」
優子「うん……でも何かの工場みたい……。」
ころろ「こっちが入り口ね、ここで手を清めてから入ってね!」
優子「う、うん……おじゃまします」
ころろ「ようこそ!脳内教総本山へ!」
優子「その異様な光景に私は目を疑った。猫耳型ヘッドギアを被った大勢の人が一心に巨大な猫のぬいぐるみを拝んでいるのだから」
信者達「う~み~ね~こ~さ~ま~」
ころろ「見て!琉球海猫様よ!神々しいお姿でしょ!?ほら、ゆうこちゃんもこの数珠を持って拝んでみて!琉球海猫様のお声が聞こえるよ!」
優子「……嫌。上手く説明出来ないけど……こんなのおかしいよ」
ころろ「琉球海猫様はとっても凄い神様なの!拝むと幸せになれるのよ!この幸せをお友達のゆうこちゃんにも味わってほしいの!なのに、どうしてそんな事言うの!?」
優子「友達だから言うんだよ。おかしいものはおかしいもん。神様って、誘われて拝むものじゃないと思うの。何も言われなくても緒が見たくなるのが本物の神様だと思うの」
ころろ「分かった……。」
優子「分かってくれたんだ。それじゃ私帰るね」
ころろ「ゆうこちゃんは魔道少女が操る悪のマジカルイオンにやられちゃってるんだ!だから拝みたくないんだ!心配しないでゆうこちゃん!私が今救ってあげるから!」
優子「全然分かってないー!」
ころろ「皆!ゆうこちゃんをつかまえて!ヘブンズサークレットを被ってもらえばきっとゆうこちゃんも目が覚めると思うの!」
信者達「う~み~ね~こ~さ~ま~」
優子「や、やだっ、離してっ!そんなヘッドギアつけたくないよっ。誰か助けてー!」
ななこ「ま~じ~か~る~あたーーーーーっく!!!」
優子「物凄い衝撃で建物の入り口の扉が吹き飛んだ。そして、その向こう側に居たのは……。」
ななこ「ご近所の平和を守る魔法少女ななこ、ただ今参上!インチキ宗教脳内教!覚悟しなさい!」
ころろ「脳内教はインチキなんかじゃないもん!」
ななこ「強引な勧誘で連れてきて、その変なヘッドギアで強制的に洗脳する。もしも本物の神様ならそんな事しないはずだよ!」
ころろ「これは世界秩序崩壊を目論む魔道少女から一刻も早く人々を守るために一番効率のいいやり方なの!……さては、あなたも魔道少女ね!皆、あいつをぶち殺して!」
信者達「う~み~ね~こ~さ~ま~」
ななこ「まーじーかーるーあいっ!」
ももんが「説明しよう。マジカルアイとは、視覚外の物を見る事の出来る、地味に役に立つ魔法なのである!後ろからの攻撃とかを避ける時に便利なんだよね。ななこちゃん、考えたなぁ」
ななこ「ほらほら、どこ狙ってるの?私はここだよー。今度は私から行くよ!まじかるおたま乱舞!!!」
ころろ「な、何て事……信者の皆が次々とやられていく……。かくなる上は教祖様!そのお力をお示し下さい!」
教祖「にゃーーーん。にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ……!」
ももんが「な、何かあいつの様子おかしいよ!?いや、元々おかしかったけど更におかしくなった!」
ころろ「教祖様!?いかがなされました!?ま、まさか……神様が降臨なされたのでは!あなたのお名前をお聞かせ下さい!」
教祖「通りすがりの琉球海猫だ、覚えておけ」
ころろ「琉球海猫様!来て下さったのですね!ありがたやありがたやう~み~ね~こ~さ~ま~」
ももんが「うわぁぁ、ななこちゃんあいつら怖いよ!キチガイだよ!早くやっつけちゃおうよ!」
ななこ「そうしたいのは山々だけど……あの人、今までの相手と比べ物にならないくらいものすごく強い!」
教祖「いでよ海棒!世界の秩序を乱す魔道少女は私が倒す!」
ななこ「わわっ、まじかるおたまっ!」
教祖「少しは出来るようだな。だけどこれならどうかな?ウルトラマリンビーーーーム!!!」
ななこ「マジカルバリアーーー!!!」
ももんが「魔法少女ななこは七つの魔法を使う事が出来る。そのうちの一つがマジカルバリア。魔力の壁で相手の攻撃を防ぐ事が出来る魔法なのである!ちなみに攻撃を跳ね返すマジカルミラーと同じ系統の魔法なんだよ」
ななこ「バリアがやぶられたっ!?わ、わわぁぁぁっ!?」
ころろ「きゃああっ!?」
優子「危ないっ!ころろちゃん!こっちに!」
ころろ「……ゆうこちゃん」
ももんが「な、ななこちゃーーーん!?」
教祖「少々やりすぎたかな……跡形もなくなってしまったようだね」
ももんが「な、ななこちゃんが……負けた!?」
ななこ「な、わけないでしょっ!私が負けたらすぐ最終回だよ!」
ももんが「ななこちゃん!生きてたんだね!」
ななこ「辛うじてね。直撃を受ける前にマジカルテレポートで逃げて、受けた傷はマジカルヒーリングで回復させたけど……次にあれを受けたら今度こそただじゃすまないよ」
ももんが「今回ばかりは頭脳労働専門の僕でもいい作戦が思いつかない……とにかくパワーが違いすぎるよ」
教祖「私の名は琉球海猫!信者達の祈りがある限り無敵だ!さぁ、信者達、魔道少女を処刑せよ!」
信者達「う~み~ね~こ~さ~ま~」
ななこ「いちかばちかやるしかない!ええいっ!」
教祖「私の元に向かってくるとは愚かな。さぁ、今度こそとどめだ!ウルトラマリンビーーーーム!!!」
ななこ「まーじーかーるーあたーーーーーっく!!!」
ももんが「だ、だめだ!ななこちゃんが力負けしてる!!!」
ななこ「あの人の頭の上にマジカルテレポート!!!そして……マジカルニードロップ!!!」
教祖「ふぐっ!?」
ななこ「そしてその隙に武器げっとー!この棒がなければあの必殺技撃てないんでしょ?これを逆に私が使ったらどうするのかなぁ?」
教祖「確かに海棒が無ければウルトラマリンビームは撃てない。しかし、海棒は普通の人間では扱えない。無駄だよ」
ななこ「やってみないと分からないでしょ!?まじかるぱわー全開ーーーーーーーっ!!!」
ももんが「こ、この力はまさか、ななこちゃんの七つ目の魔法の覚醒……!?いけない!ななこちゃん!その力だけは使っちゃいけないんだぁーー!」
教祖「なっ、ば、馬鹿な……!」
優子「建物の外まで逃げたら大丈夫だよね……。しっかりしてころろちゃん」
ころろ「ううっ……。」
優子「あっ!みてみてころろちゃん!建物の中から虹色の光が……きれいだねぇ」
ころろ「ほんとだ……。ねぇゆうこちゃん、一緒に家出しようとした時の事覚えてる?」
優子「うん。決心して、バス停まで行ったんだけど。その時大きな虹が見えて。その虹を見てたらいつの間にか家出しようなんて考え、忘れてたよねぇ。あの時の虹に似てる気がするね」
ころろ「……ゆうこちゃん、ごめんね。私、どうかしてたみたい」
優子「ころろちゃん、正気に戻ったの!?私の知ってるころろちゃんに戻ったの!?」
ころろ「何だか今まで悪い夢の中に居たみたい。ゆうこちゃんに酷い事しちゃった……。ゆうこちゃん、こんな私でも、お友達でいてくれる?」
優子「勿論だよ!ころろちゃんは今までも、そしてこれからもずっと私のお友達だよ!」
ころろ「ありがとう……ゆうこちゃん」
優子「不思議な事に、建物の中の信者さん達も皆正気に戻っていたの。だけど教祖さんは行方不明みたい。逃げ延びてまたどこかで脳内教を広めるつもりなのかな。だけどもう私もころろちゃんも惑わされないよ。だって……。」
ころろ「ねぇ、ゆうこちゃんは本当のところ、神様っていると思う?」
優子「んーと。わかんない!」
ころろ「だよね!あはは!」
優子「じゃあさ、ころろちゃんは幸せ、って何だと思う?」
ころろ「えーっと。わかんない!」
優子「だよね!あはは!」
ころろ「だけど……今の私は幸せだよっ!」
優子「だって……神様がいてもいなくても、幸せか不幸せかを決めるのは、私達自身なのだから」