魔法少女まじかるななこ アラサー編
N「ここはどこにでもあるような普通の街。ただ一つ違うことがあるとすれば……魔法少女が平和を守っている街だということ。しかもその魔法少女は……。」
怪人「ふはははは!我こそは秘密結社ブラックカンパニーの怪人係長!世界中のタイムレコーダーを壊して退勤出来ないようにしてやる!」
?「ちょっと待ったぁぁぁっ!」
(SE・金属音)
怪人「おたま!?ということはまさか……!」
ななこ「ご近所の平和を守る魔法少女ななこ、ただ今参上!」
怪人「出たなアラサー魔法少女!アラサーの分際で少女を名乗る不埒な奴め!」
ななこ「私だってまさかこの年になるまで魔法少女やってるなんて思ってもみなかったよっ!……ってそんなことはどうでもいいのっ。労働基準法を踏みにじる行為許すまじ!覚悟しなさいっ!」
怪人「我々の邪魔はさせん!出でよ怪人平社員共!アラサー魔法少女をこてんぱんにしてやれ!」
ななこ「うゆっ!?下っ端戦闘員っぽいのが半ダース出てきたよ!?お約束ではここで戦闘シーン入るところだけど、一日フルタイム勤務した後だから疲れてるんだよねぇ……。よしっ」
(SE・魔法)
ななこ「まじかるおたまフォームチェンジ!全員まとめて、ま~じ~か~る~ロケットランチャーーーーーっ!」
怪人「そんなんありかぁーーーーーーー!?」
(SE・爆発)
ななこ「やったぁっ!大勝利!」
魔法少女まじかるななこアラサー編(仮)
ももんが「ななこちゃん、おかえりー」
ななこ「ただいまー。つかれたぁ。定時で帰れると思ったら怪人が出たんだよぉ」
ももんが「おつかれさまだねぇ。やっぱり使い魔である僕を連れていった方がいいんじゃない?不意の怪人出現にもサポートするよ?」
ななこ「それは嫌。暑苦しいし獣臭いし職場で獣臭がするとか噂されたら嫌だし」
ももんが「がーんっ!」
ももんが「それにしてもななこちゃん」
ななこ「何かなぁ?」
ももんが「その部屋着のクソダサジャージ、高校のだったよね?いつまで着るつもり?」
ななこ「くたびれたら捨てるつもりだったんだけど。ずるずる現役だなぁ。それとももちゃん。これ、高校のじゃなくて中学の」
ももんが「……うわぁ」
ななこ「まぁいいや。ごはん食べようよー」
ももんが「……しかし、あの料理好きなななこちゃんが週半分しか自炊しなくなるとは誰が予想出来たであろうか」
ななこ「流石に残業ある日とかは帰ってからごはん作る気力なんてないなぁ。まじかるヒーリングで疲労回復出来たらいいのに」
ももんが「まじかるヒーリングは外傷や病気にしか効かないからねぇ」
ななこ「それで、新しい魔法少女は見つかったの?」
ももんが「い、いやぁ、最近はなかなか適性のある子がいなくって……。」
ななこ「あのねぇももちゃん。私にいつまで魔法少女させるつもりなの?」
ももんが「だ、だって仕方ないじゃないか!いないものはいないんだから!」
ななこ「知ってる?退職に関する取り決めって、労働基準法じゃなくって民法で定められてるんだよ?」
ももんが「……ななこちゃん、変わったね。出会った頃のななこちゃんはそんな事言わなかった。ご近所の平和を守るための活力があふれてた!」
ななこ「何も平和を守るのが嫌って言ってるわけじゃないよ!」
ももんが「え?」
ななこ「まじかるフォームの際の基本衣装、何とかならないの!?流石にこの年でフリルのついた衣装は恥ずかしいよっ」
ももんが「いやぁ、あれは契約した時にあれが基本衣装だってななこちゃんも合意したでしょ?」
ななこ「だ、だって十数年もあの衣装着るだなんて思ってなかったんだもん……。」
ももんが「どうしても嫌だったら基本衣装の後から更にフォームチェンジっていう手もあるし」
ななこ「一度あの衣装を挟むのが嫌なのっ。大体、今日だって怪人さんにアラサーが少女名乗るな的なクレーム受けたし、同級生と集まっる時にSNSに『女子会』と形容することがそろそろ憚られるし……。」
ももんが「何だそんな事かぁ」
ななこ「ぬなっ!?そんな事とは何かなぁ!?」
ももんが「アラサーとかアラフォーとか世間は何かと自分達の概念の中の枠に入れたがるけど。ななこちゃんはななこちゃんじゃないか」
ななこ「ももちゃん……」
ももんが「大切なのは肩書じゃなくて中身でしょ」
ななこ「それはそれとして、フリフリの衣装着て暴れ回るアラサーの社会的評価を考慮して欲しいんだ」
ももんが「どうしてクソダサジャージが良くてまじかる衣装が駄目なんだろ。僕には理解出来ないよ」
ななこ「いいから!ブレインヘブンに行って契約事項改正して来なさいっ!まじかる強肩投法ーーーっ!」
ももんが「いやぁーーーーーーっ!また新しい技編み出してるーーーーーーっ!」
N「一匹のももんがが夜空に消えた。しかし、秘密結社ブラックカンパニーとの戦いは始まったばかりだ。がんばれ、アラサー魔法少女!」
(続かない)




