七つの力編 魔法少女対電波少女
001N「それは一見何の変哲もない平凡な一日の始まりであった」
002ななこ「こんにちわー」
003兄さん「やぁ、ななこちゃん。良く来たね」
004N「彼はななこのご近所のお兄さん。最近アパートに一人暮らしを始めた社会人一年生さんである」
005ななこ「おにーちゃん、しっかりご飯食べてるー?ちゃんと食べなきゃだめだよー?」
006兄さん「最近残業で忙しくてろくなもの食べてないな……」
007ななこ「そっかぁ。社会人って大変なんだねぇ……。よしっ、今日は私が何か作っちゃおう!」
008兄さん「え?でも悪いよ」
009ななこ「いいのいいの、おにーちゃん、材料取ってくるからちょっと待ってて!」
010兄さん「ななこちゃん?あー、行っちゃった……」
011N「これで終われば普通の良い話なのだが、魔法少女物のお約束で一騒動起こってしまうのであった……」
(SE・メール受信音)
012兄さん「あ、メールが来てる。……っ!?」
00t電波魔法少女まじかるななこ 第2話『魔法少女対電波少女』
013ななこ「さて、皆。私の得意技にまじかるクッキングってあるよね。あの材料、どこから取り出してるか分かる?魔法?あはは、違う違う。正解はももんがの頬袋から取り出してたんだよ」
014ももんが「で、どうして僕はお兄さんの部屋に入らずに外で待機なのかな?」
015ななこ「喋るももんがなんて気持ち悪いでしょ、常識的に考えて」
016ももんが「うわ!この子、さらっと人が傷つくようなことを!」
017ななこ「人じゃなくてももんがだからいいの。というわけで、ももちゃん!早く材料出して!」
018ももんが「いきなり言われても、わわ、手つっこまないで、むぐ、むがぁ~」
019N「………。どうでもいいけどこのももんがの頬袋、物理法則を軽く2、3個くらいは無視していそうである」
020ななこ「まぁ、このももんが、魔法生物だし。細かい事は気にしない」
021N「……そういうものなのね。分かった、細かい事はつっこまない」
022ももんが「むがが~」
023兄さん「まさか、このタイミングであいつが来るなんて……ななこちゃん。君はもう帰った方がいい」
024ななこ「え?どーして?」
025兄さん「悠長に説明している暇は……はっ!?」
(SE・チャイム)
026電波「お兄ちゃーん。来ましたよー♪」
027兄さん「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ……!遅かったか……!」
028ななこ「ど、どういう事なのかなぁ?」
029兄さん「あいつはネトゲで知り合って以来、俺につきまとっている電波女だ。必死で逃げて振り切ったと安心していたが、ここも突き止められてしまったようだ……!」
030ななこ「分かりやすい説明台詞ありがとう」
031電波「どうしたの!?お兄ちゃん!?誰かに捕まってるの!?……もしかして魔女に捕まってるの!?待ってて!今助けるから!」
(SE・何かをドアに打ち付ける音)
032ななこ「うわわわ、ドアを壊そうとしてるよ!?どうする……?警察に通報する?」
033兄さん「一応、連絡はしたが、警察とてすぐには来てくれないさ」
034ななこ「だったら時間稼ぎに説得でもしてみたら?おにーちゃん慕われてるっぽいじゃん」
035兄さん「じょ、冗談は言わないでほしいな。あいつは真性の電波だ。あいつには説得なんて通用しない……逃げるしかない!」
036ななこ「逃げるって言ってもどこから?まさか玄関からは出られないし、ここ2階……」
037兄さん「あるじゃないか、もう一つ出口が」
(SE・ドアが壊れる音)
038電波「お兄ちゃん、大丈夫?助けにきたよ」
039兄さん「き、きたぁぁぁぁぁぁぁ!もはやこれまでだ!ななこちゃん、飛ぶよ!」
040ななこ「えっ!?もう一つの出口って窓の事ー!?うゆゆーーーー!?」
041ななこ「うぅ……いたたた……」
042ももんが「ななこちゃん、大丈夫?」
043ななこ「私は大丈夫だけど……あれ、おにーちゃんは……?」
044ももんが「お兄さんはななこちゃんの下敷きになってるんだけどね……」
045ななこ「お、おにーちゃん大丈夫!?」
046兄さん「うう……。早く逃げなくちゃ……うおおっ!?」
047電波「お兄ちゃん、みーつけた」
048N「電波が現れた。戦う?逃げる?魔法?」
049ななこ「本当は関わりたくない相手だけど……このままじゃお兄ちゃんが危ないから仕方ないなぁ」
050N「戦う意思を固めたのか、ななこは電波の前へと歩み寄った。やっぱり正義のヒロインは敵に背中を向けてはいけないよね、うん」
051ななこ「……君、相手が嫌がってるんだからもうやめた方がいいと思うなぁ」
052電波「あんた誰?あ、分かった。さては魔女ね!」
053ももんが「……ある意味正解。魔法少女も魔女の一種だよね」
054電波「やっぱり!私とお兄ちゃんを引き裂くための刺客なのね!」
055ももんが「……ねぇ、ななこちゃん。もう駄目だ、あいつ真性だよ。僕、頭が痛くなってきた。今回だけはこのままお家に帰ってお休みしても良い?」
056ななこ「だめ」
057ももんが「……やっぱり」
058電波「私達の仲を引き裂こうとする奴は許さないんだから!」
059N「電波は警棒でななこを攻撃!」
060ななこ「おにーちゃんシールド!」
061電波「お兄ちゃんどいてそいつ殺せない!」
(SE・打撃音)
062兄さん「あふぅん」
063N「ななこはシールドで警棒を防いだ!兄さんに29のダメージ!兄さんは倒れた!」
064ななこ「おにーちゃん、だいじょーぶ!?あ、もう駄目だ。白目剥いてる。よくもおにーちゃんを……!」
065ももんが「ななこちゃん、君さっきお兄さんを盾にしてなかったかい……?」
066ななこ「いやぁ、てっきりおにーちゃんを盾にしたら相手も躊躇するかなと思ったんだけど……全く通用しなかったね、てへっ」
067ももんが「てへっ、じゃないでしょーが!」
068ななこ「でも、おにーちゃんの前で魔法を使うわけにもいかないし……意外とこれって結果おーらいなんじゃないのかなぁ」
069ももんが「はいはい……分かったからこれで早くまじかるななこに変身するんだっ」
070ななこ「おっけー。まじかるフォームっ!」
071ももんが「説明しよう。魔法少女ななこは七つの魔法を使う事が出来る。そのうちの一つがマジカルフォーム。様々な姿に変身する事が出来るが、主に魔法少女の戦闘服に着替える時に使う魔法なのだ。ちなみに魔法少女としては絶対必要な魔法の一つである」
072N「しかし、えてして現実は非情なものである。変身中でも敵は待ってくれない」
073電波「スキあり!」
(SE・打撃音)
074ななこ「わわっ、ちょ、ちょっと待って……」
075電波「待たない」
(SE・打撃音)
076ももんが「僕は頭脳労働専門なんだけどなぁ……。仕方が無い。えいっ、秘技・どんぐりつぶて!」
(SE・ちょっと抜けた打撃音)
077電波「痛っ!?な、何……どんぐり!?」
078ももんが「電波女!僕が相手だっ!」
079電波「ふぅん……小動物風情が上等だね……」
080ももんが「小動物だから、手加減してね?」
081電波「ひゃあああああ!一撃で叩き割ってあげるよぉおおお!」
082ももんが「い、いきなり殺す気満々デスカー!?」
(SE・打撃音)
083ななこ「んー、やっぱりこういう時って重装備の方がいいよねぇ……フルアーマーなんてどうだろう」
084ももんが「ななこちゃん、僕が時間を稼いでいる間に早く……!」
(SE・打撃音)
085N「電波の攻撃!ももんがに18のダメージ!」
086ななこ「それとも何か新しい力に目覚めてもいいかもなぁ。バイオななことかロボななことか……」
087ももんが「は、早く……ぐぶぅ!?」
(SE・打撃音)
088N「電波の攻撃!クリティカルヒット!ももんがに56のダメージ!」
089ななこ「うーん、ロマンが広がるなぁ……」
090N「こうして、ななこが変身を終えるまで15分間かかったという……」
091ななこ「やっぱりいつもの服装が一番しっくりくるね。というわけで魔法少女まじかるななこ参上ー!」
092ももんが「お、遅いよななこちゃん……ばたり」
093ななこ「ももちゃん!?いつの間にか私が一人で戦わないといけなくなってるね……」
094電波「この女が魔女なのね……私、負けない!」
095ななこ「うわぁ、やる気満々みたい……参ったなぁ。よし、マジカルアイで相手の攻撃の出方をみよう……マジカルアイ!」
096N「ななこはマジカルアイをとなえた!」
097ななこ「……あれ?何も見えない……どうしたのかな……あれ?あれ?」
098N「しかしマジックポイントが足りない!何とななこは変身に魔法を使いすぎて魔力が全く残っていなかった!」
099ななこ「がーんっ。ど、どうしよう……魔法のない魔法少女なんて桜の咲いてないお花見みたいなものだよぉ……」
100電波「動かないで!一撃でしとめるからぁぁぁ!」
101N「電波は飛び上がると警棒でななこを攻撃!」
102ななこ「うゆゆゆっ!?」
103N「ななこ絶体絶命のピンチである。だがその時、ななこはある事を思いついた。それは……。」
(SE・金属音)
104電波「な、何……!?私の攻撃をおたまでふせいだ……!?」
105ななこ「そうだよねぇ。何も魔法少女だからって必ずしも魔法で対抗しないといけない道理はないよねぇ……?」
106電波「えっ……?」
107ななこ「ま・じ・か・る・おたま乱舞!」
108電波「ちょ、ちょっと待って、それはいくら何でも、」
(SE・必殺技炸裂)
109電波「ぎゃふぅ」
110ななこ「やったぁっ!大勝利!」
111N「こうして怪しげな電波の暴走はもっと怪しげな魔法少女の強引な力技によって阻止された。彼女は今日も町内の平和を守っている。彼女の名は、魔法少女ななこ……」