世直し編 ななこの変調
000N「ご町内の平和を守ってきた魔法少女ななこ!
しかし平和そうな町にもまだまだ悪の気配が満ち溢れていた。
現代社会の闇に人知れず潜み悪事を働く怪人達を倒すべく、
今ここにななこの世直しが始まった!
戦え、魔法少女まじかるななこ!」
001ブルー「おーい、栄養のつきそうな物買って来たぞ―」
002ももんが「すまないね、特撮ブルー」
003ブルー「なぁに。困った時はお互い様さ。で、魔法少女君の様子はどうだい?」
004ももんが「相変わらずさ……酷い熱だ。この前の温泉でタオル一枚で歩き回ったせいだとばかり思ってたけどそうじゃない。……全然目を覚まさないんだ」
005ブルー「ただの風邪じゃないって事だな?何かまた事件が絡んでいるのか?」
006ももんが「恐らくは……。だけどこんな事は初めてでどうしたらいいのか見当もつかないんだ。僕は今から魔法世界ブレインヘブンに戻って幻想の君に指示を仰いで来る。特撮ブルー、その間ななこちゃんをお願い出来る?」
007ブルー「分かった。任せろ」
008ももんが「すまないね……なるべく早く戻ってくるよ!」
009N「こうしてももんがはブルーに後を託し、マイナス時空を越えて魔法世界ブレインヘブンへと向かった……。」
00tももんが魔法少女まじかるななこ 第13話『ななこの変調』
010ななこ「うゆゆぅ……まだ眠いなぁ……。って、今何時!?うゆっ!?早く学校行かないと遅刻だよっ!」
011お兄さん「やぁななこちゃん。おはよう。」
012ななこ「あ、お兄さん、おはよー!」
013お兄さん「あはは……今日はまたすごい寝ぐせだね」
014ななこ「うゆっ!?そんなにすごいの!?」
015お兄さん「おいで、直してあげよう。……ななこちゃん、やっぱり一人暮らしは大変?」
016ななこ「大変じゃないって言ったら嘘になるけど……お母さん、お仕事で忙しいんだから仕方ないもん。私が頑張らなきゃ!」
017お兄さん「そっか、強いな。ななこちゃんは。はい、出来たよ」
018ななこ「ありがとー!お兄さんもしっかりご飯食べなきゃ駄目だよ!行ってきまーす!」
019ななこ「やっぱり家庭科の授業は面白いなぁ。今日の実習は何作ろうかなー?クッキーがいいかなー?パンケーキがいいかなー?シュークリームがいいかなー?ちょっと趣向を変えてようかんもいいなぁー」
020優子「ななこちゃん、そんな難しいお菓子作れるんだー。すごいねー」
021ななこ「あはは。まだ練習中だけどね。……でも、ようかん難しそう。やっぱり今日はシュークリームでいいや。優子ちゃんも一緒に作ろ?クリームクリーム♪」
022優子「うんっ♪おいしいシュークリーム作ろうね」
023ななこ「えっと、シュークリームの作り方はまず鍋に無塩バターとお砂糖、水に塩を入れて暖めながら混ぜるんだよ。隠し味にちょっと牛乳も混ぜようか」
024優子「あっ、煮立ってきたよ」
025ななこ「ここで薄力粉を入れて混ぜるんだよっ」
026優子「混ざったー」
027ななこ「そしたら火を消して練り合わせるんだよ」
028優子「よいしょっよいしょっ……ふぅ、これくらいでいいかな?」
029ななこ「んー。もうちょっと練った方がいいなぁ。この時、しっかり練らないと上手く膨らまないんだよ」
030優子「へー、ななこちゃんって詳しいねー。よいしょっよいしょっ」
031ななこ「そろそろいいかな。卵をちょっと加えて混ぜて……うん、だいぶなめらかな生地が出来たね。これを袋に入れて、適当な大きさに絞り出すんだよ」
032優子「ええっと……これくらい?」
033ななこ「優子ちゃんうまいうまい!そしたらこれをオーブンで30分くらい焼くんだよっ」
034優子「30分も?こげちゃわないか心配……。」
035ななこ「あっ、オーブンは開けたら駄目だよ。ここで開けたらシューがしぼんじゃうんだよ」
036優子「へー、そうなんだー」
037ななこ「その間にカスタードクリーム作ろうかー」
038優子「うんっ!」
039N「この時、オーブンの中が怪しく光った事に気付く者は居なかった……。」
040ブルー「本当に全く目を覚まさないな……。しかもかなりの高熱だ……。」
041ブルー「氷枕、もうちょっと買っておくべきだったな。氷枕二つのローテーションでは、すぐにぬるくなってしまう……。小動物君、早く戻って来てくれ……。」
042ななこ「そろそろ焼き上がったみたいだなぁ」
043優子「どれどれ……うまく出来てるかなー♪」
(SE・爆発音)
044怪人「ぬわっはっはっはっはっは!俺は怪人シュークリームだ!」
045優子「オーブンの中から変態がー!?何あれー!」
046怪人「そんな事より聞いてくれよ。最近、巷では俺達の事をスイーツって呼んでるらしいぜ。俺としてはデザートで充分じゃねぇのかと思うんだが……いちいち呼び方が変わったら紛らわしくてかなわねぇぜ」
047ななこ「な、何かもっともらしい事言ってるけど……。」
048怪人「最近、健康志向とかで果物にデザートのお株を奪われつつあって寂しいぜ!ここいらで洋菓子の力を見せつけてやる!くらえ!甘さたっぷりクリーム発射!!!」
049優子「ひゃあっ!?」
050ななこ「ゆうこちゃん危ない!うゆっ!?」
051優子「な、ななこちゃん大丈夫……?」
052ななこ「何が何だか分からないけど……暴れ回るのはいけない事!私が止めてみせる!ええっと武器は……おたまでいいや。ななこのおたま攻撃ーーーっ!!!」
053怪人「ぬわははははは!効かんなぁ!」
054ななこ「表面がへこんだだけで……私の攻撃が効いてない!?」
055怪人「今度はこっちから行くぜ!シューパーンチ!」
056ななこ「うゆゆゆーーーーーーー!?」
057優子「ななこちゃーーーーーーん!!!」
058ブルー「どうすればいいんだ……!こんな事ならバトルの事だけじゃなくて看病の事も勉強しておくんだったぜ」
059ももんが「ただいま!特撮ブルー、ななこちゃんの様子は!?」
060ブルー「どんどん熱が上がっててさっきからうなされてるみたいだ。で、何か対策とか聞いて来てくれたんだろうな?」
061ももんが「もちろん!これを使うのさ!」
062ブルー「何だこれ……でっかい結晶のようだが」
063ももんが「これこそ幻想の君から預かって来た秘密アイテム・アブソリュートブリザード!この冷気の結晶でななこちゃんの熱を下げるんだ!」
064ブルー「なるほどっ!早速やるぞっ!魔法少女君……絶対に君を助けてみせるぞ!」
065ももんが「ななこちゃん……頑張るんだっ!僕がついてるぞっ」
066ななこ「やっぱり駄目だったなぁ……どこにでもいるような小学生があんな怪人に立ち向かえるはず無かったんだよ……。私に、力があれば……!」
067ももんが「君が、ななこちゃんだね」
068ななこ「うんっ。私はななこだよ。君はだーれ?」
069ももんが「僕はももんが。魔法世界ブレインヘブンから来た魔法生物なんだ!」
070ななこ「魔法世界?魔法生物?」
071ももんが「ああそっか……この世界は魔法科学が遅れてるんだった。手短に言うよ。ななこちゃん、魔法の力欲しくないかい?君には魔法の才能があるよ」
072ななこ「魔法の力?それがあればあの怪人にも勝てるの?」
073ももんが「うんっ。もちろんさ。僕と一緒に平和のために戦おう!」
074ななこ「……うん。分かった。私、平和のために戦うよ!」
075ももんが「よし、決まりだね。じゃあ、そうだなぁ……それ持ってみて」
076ななこ「うゆ?おたまがどうしたの?」
077ももんが「それ、魔法媒体にちょうど良さそうな形してるみたい。いい?じっとしててね……ファーストコンタクト・マジカルフォーム!」
078ななこ「うゆっ!?身体に力が溢れて……おたまも強そうになって……お洋服も変わった!?」
079ももんが「これがマジカルフォーム。魔法少女の基本能力さ。ななこちゃん、君は魔法少女になったんだ」
080ななこ「魔法少女!?」
081ももんが「マジカルフォームすることで全ての能力が上乗せされているんだ。あの程度の怪人なら倒せるよっ」
082ななこ「よーしっ!反撃開始だよっ!」
083怪人「さぁ!プリンもケーキもエクレアも皆揃って世界制覇だ!頑張った自分へとご褒美に!おなかがすいたなら僕の顔をお食べよ!」
084優子「な、何だかヒートアップしてる……どうしよう……。」
085ななこ「待ちなさい!」
086怪人「何者だ!?」
087ななこ「魔法少女まじかるななこ参上!平和を乱す悪い子は私がこらしめちゃうんだから!」
088怪人「こらしめる?面白い。やってみろ」
089ななこ「……ももちゃん、私、魔法使えるようになってるのかなぁ?」
090ももんが「ええっと。一番簡単な魔法ならすぐ使えるはずだよ。マジカルアイって魔法なんだけど、力を込めて精神を集中させるんだ。すると見えない場所まで見えるようになるんだ」
091ななこ「ええと、こうかな……マジカルアイ!」
092ななこ「あっ!怪人の胸の所が光ってる!」
093ももんが「あれがマジカルクリスタル……怪人の核だよ。ななこちゃん、そこを狙うんだ!」
094ななこ「分かったよ!まじかるおたまーっ!」
095怪人「ぶるわぁぁぁぁぁーーーーーーー!?」
(SE・爆発音)
096ななこ「やったぁ!大勝利!……って夢かぁ」
097ももんが「ななこちゃん!目が覚めたんだね!」
098ななこ「ええっと……そっか、私、熱で寝込んでたんだっけ」
099ブルー「その熱が怪人の仕業だったらしくてな。小動物君が持ってきた結晶を使ったら正体を現わして逃げていったよ」
100ななこ「そっかぁ。ももちゃん、ありがとう……これからも宜しくね!」