七つの力編 怖い!悪徳社長の陰謀
001ゆうこ「ここはどこにでもあるような普通の街。ただ一つ違う事があるとすれば……どうやらここは魔法少女が平和を守っている街らしいという事である。無論、私も信じては居なかった。実際にそれを見るまでは……」
00t優子魔法少女まじかるななこ 第1話『怖い!悪徳社長の陰謀』
002ゆうこ「私とした事が寝坊だなんて。早く行かないと遅刻だわ……。あら?空き地に人が居る……」
003社長「くっくっく……あと少しだ。あと少しで俺の世界征服が成就する……苦節20年、一介の小企業社長に身をやつしながらこつこつとご町内を勢力化に置いていき、」
004ゆうこ「うわぁ……あの人、壁に向かって話しかけてる。いかにも危なそうだから関わらないでおこうっと」
005社長「ぬっ!貴様、聞いていたな!?」
006ゆうこ「えっ!?わ、私?聞いてません!世界征服がどうのこうのなんて聞いてないです!」
007社長「黙れ小娘!秘密を知られてしまったからには野放しには出来ん!首輪付けて座敷犬として飼ってやる! 無論、犬耳もオプションでな!想像したらオラ興奮してきたぞ」
008ゆうこ「勝手に話してた癖に、そんな理不尽なー!誰か助けてー!」
009ななこ「うゆゆ!?助けを求める声が聞こえる!」
010ももんが「ななこちゃん、向こうで少女誘拐の真っ最中だよ!」
011ななこ「ゆ、誘拐!?それは大変、詳しく教えて!」
012ももんが「誘拐されてるのは上村ゆうこちゃん、小学生。ななこちゃんと同い年だね。ランドセルの似合うおとなしめの女の子。趣味は天体観測。昨夜は遅くまで自室にある天体望遠鏡を覗いていたため、今朝は遅刻気味で……」
013ななこ「どうしてそんなに詳しいの!?……じゃなくて、犯人は!?」
014ももんが「犯人は体格の良い男が一人だけ。ななこちゃんの魔法でいけるよ!」
015ななこ「ええっ?無理、無理だよぉ。だって相手は大人の男の人なんでしょ?魔法使えても真正面から行ったらやられちゃうよぉ」
016ももんが「……ケッ、可愛い子ぶりやがって」
018ななこ「……何か言った?」
019ももんが「いいや、何も言ってないよ?」
020ななこ「そう。なら良いんだけど」
021ももんが「そんな事言ってる間に犯人に逃げられちゃったよ、どうするの?」
022ななこ「だいじょーぶ。私の魔法の一つ、マジカルアイの力でどこに連れ去られたのかはすぐに分かるよ」
023ももんが「説明しよう。魔法少女ななこは七つの魔法を使う事が出来る。そのうちの一つがマジカルアイ。箱の中や遠く離れた場所など、視覚外の物を見る事の出来る魔法なのだ。ちなみに七つの魔法の中では一番お手軽な魔法なのである」
024ななこ「……何言ってんの?」
025ももんが「いやぁ。リスナーの皆さんに分かりやすいように説明したんだ」
026ななこ「ふーん」
027ももんが「でも場所は分かってもどうやって助け出すの?真正面からは嫌なんでしょ?」
028ななこ「それがね、私に良い考えがあるんだよ……」
029ゆうこ「結局、事務所までつれてこられてしまった……」
030社長「さぁ、犬耳をつけるが良い」
031ゆうこ「……嫌」
032社長「そうかそうか。猫耳の方がいいのか。だったらすぐに用意させよう」
033ゆうこ「誰もそんな事言ってないー!」
034秘書「社長」
035社長「何かね?君が猫耳を仕入れに行ってくれるのかね」
036秘書「違います。社長宛にお手紙が届いています」
037社長「どれどれ……」
038ななこ『これから悪い社長さんを懲らしめに行きます。魔法少女ななこ』
039ゆうこ「ななこ……?魔法少女ななこ……?」
040社長「知ってるのかい?」
041ゆうこ「友達の間で噂になってるんです……治安が乱れつつあるこの街の平和を密かに守っている魔法少女が居るっていう話……」
042社長「魔法少女なんて馬鹿馬鹿しい。ここは幼稚園じゃないぞ」
043秘書「社長は魔法少女、お信じにならないのですか?」
044社長「当たり前だ。そんなもん居るはずがない!」
045ゆうこ「でも、実際に手紙が……」
046社長「こんなもの誰かのいたずらだ!魔法少女なんて居るはずがない!そもそも魔法なんてものはありえない! あるというのなら証拠を見せてもらいたいものだ!」
(SE・窓が開く)
047秘書「あら……風も無いのにひとりでに窓が開きましたよ。不思議ですねぇ」
048社長「き、きっと立て付けが悪いせいだ!断じて魔法などではない!」
049ゆうこ「誰も魔法だなんて言ってないのに……あっ!」
050社長「五月蝿いな。この程度の事で騒ぐんじゃない」
051ゆうこ「で、でも開いた窓から何かが飛び込んで来て……」
052社長「何ぃ!?むがっ!何だこいつは!!!顔にへばりついて離れないぞ……」
053秘書「社長!今お助けします!」
(SE・殴る)
054社長「痛ってぇぇぇ!ばか、こいつは俺の顔だ!」
055秘書「あらら、寸前で逃げられてしまったみたいですね」
056社長「一体何が張り付いてたんだ……」
057ももんが「僕だよ。ももんがだよ。魔法少女まじかるななこの使い魔さ!」
058社長「ひぇぇぇぇっ!小動物が喋ったぁぁぁぁ!」
059ゆうこ「魔法少女の相棒の小動物は喋るって言われてるけど……本当だったのね」
060社長「ば、馬鹿な!こんな!小動物が!喋るなんて!俺は認めん!」
061ももんが「ぐぇぇぇぇ、ちょっと、僕は、雑巾じゃ、無いんだってぇぇぇ!」
062ゆうこ「あっ、凄いねじれ方」
063社長「小動物風情が驚かせやがって。だが使い魔がこんなに弱いならそれを操る魔法少女も弱いに違いない」
064秘書「それはどうかしらね」
065社長「そうに決まってるさ。一向に姿を現そうとしないところを見ると、怖気づいて逃げ出したのだろう」
066秘書「あら、ひょっとしてまだ私の正体に気付いてないのかしら?」
067社長「えっ……?」
068秘書「変身解除!」
(SE・魔法効果音)
069ななこ「ご近所の平和を守る魔法少女ななこ、ただ今参上!」
070社長「出たな!魔法少女!」
071ななこ「あなたの計画は全て暴露されたよ!無駄な抵抗をやめて世界征服なんて諦めなさい!」
072社長「そうはいかん。ここで辞めたらご町内に配ったワイロの中華ドレッシングが無駄になってしまう!」
073ももんが「うわ、微妙なワイロ!」
074ななこ「改める気が無いのなら魔法の力を使ってでも止めてみせる!」
075社長「やれるものならやってみろ!」
076ななこ「魔法少女ななこの大魔法!ま~じ~か~る~~……クッキング!」
077社長「えっ?」
078ななこ「お鍋半分にお湯を沸かして、具材を切って煮えにくい物から放り込む!そして魔法のおたまでアクをすくう!」
079ももんが「ななこちゃん、ダシを忘れてるよ」
080ななこ「あっ、いけなーい♪ダシは……ももんがでいいや♪」
081ももんが「いやぁー!やめてぇー!」
082ななこ「そしてしばらくぐつぐつと煮立せる!するとななこ特製スープの出来上がり!さぁ飲んで!」
083社長「うむ……うぐぁぁ!何じゃあこりゃあ!!!」
084ゆうこ「あっ、社長倒れた」
085ななこ「私が居る限り、悪は栄えさせないんだから」
086ゆうこ「よく分からないけど……一応ありがとう、って言っておくね」
087ななこ「これが魔法少女の使命だから。じゃあね!」
088ゆうこ「こうして怪しげな陰謀はもっと怪しげな魔法少女によって未然に阻止された。彼女は今日も町内の平和を守っているのだろう。彼女の名は、魔法少女ななこ……」