婚約破棄された私は王子に拾われ幸せになりました。
「君とはもうやっていけない! よって、婚約は破棄とする!」
告げられたのは、ある春の日でした。
私の婚約者であったフリュベル・アーロンは、勇ましさのある表情で、勢いよくそんなことを言ってきたのです。
彼は愚かなほどに真っ直ぐな決意を抱いているようでした。
だから私は説得することは諦めました。
ただ、寂しさは感じていました。
だって普通そうでしょう? 直前まで、いずれ夫婦になると思っていたのですから。
その日私はフリュベルの前から去りました。
私と彼の関係は終わったのです。
◆
早いもので、フリュベルとの別れから数年が経ちました。
私は今、この国の王子の妻となり、城で忙しく生活しています。
一人になって弱っていた私を助けてくれたのが、彼、王子でした。
ちょっとしたきっかけから知り合うこととなった。それはある意味奇跡だったと言えるでしょう。そして、王子が私を気に入ってくれたことも、一つの奇跡だったと言えるかもしれません。
王子には感謝しています。
ちなみにフリュベルはというと、あの後自らが勇んで始めた事業で大失敗し、所有していた財産をすべて失うこととなってしまったそうです。また、失ったのみならず、借金まで負うこととなってしまったということです。
しかし気の毒には思いません。
それもまた、彼の人生ですから。
◆終わり◆