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おはようの挨拶と共に婚約破棄されました。
それは、婚約者ウェノムの家に泊まっていて迎えた朝のことでした。
「おはよう」
彼はそう挨拶して、続ける。
「あのさ、急で悪いけど、婚約破棄させてもらうから」
私は寝起きのまだすっかりしない頭で思う。
何なのだろう、と。
「ということだからさ、さっさと出ていってくれ。あ、この荷物も持って出ていってくれな」
よく分からないうちに追い出された。
◆
あの日から今日で十二年。
私は今、愛する人と共に、のんびりと生きている。
子どもはまだ設けていないけれど、そのことに関しては特に急ぐ気はない。できればできた、できなければできない、それはきっと運命だろう。だからこだわらないようにしている。
与えられたもので生きればいい。
与えられたものに日々感謝すればいい。
「もう起きたのか?」
「えぇ」
「早くないか」
「そうね。……少し早く目が覚めたの」
今は彼といられる時間を大切にしたい。
ちなみにウェノムはあの後酷い虫歯になって、それが悪化し過ぎたことで、最終的には落命してしまったそうだ。
◆終わり◆