婚約は破棄ということですので、私はこれから自由に生きることにします!
「エリーナ・リリザリー、君が性悪であることは侍女や母から聞いた。よって、婚約は破棄とさせていただく」
私、エリーナ・リリザリーは、一応資産家の娘ではあるがそれなりに普通に生きてきた人間だ。
しかし、婚約者ヴァイスは、私を悪い人間だと思っている。
なぜって?
簡単なことだ。
彼の周りにいる女性たちが私の悪口を吹き込んでいるからである。
悲しいことだが、それが現実なのだ。
「そうですか……残念ですが、分かりました」
残念ながら私は彼の周りの人たちには受け入れられなかった。
けれども、今さら何かできるわけでもないし、彼女らとの関係を改善するのも難しい。
最初の頃は関係を改善しようと努力していたのだけれど。
「ふん。分かったならさっさと去ってくれ。二度と僕の前に現れるな」
「はい。それでは失礼します」
その後私は実家へ帰り両親と共にしばらく過ごした。
幼い頃の夢だった時計屋を開くということを思い出し、近所の時計屋に弟子入り。数年の修行期間を経て、ついに、それらしいことをさせてもらえるようになる。
それから十数年、私はついに独立。
自分の店を持つことができた。
私の幼き日の夢は叶った。
ちなみにヴァイスはというと、あの後家柄に関して嘘をついている女性に引っかかり、借金返済を手伝わされてしまうことになったらしい。女性の借金のほとんどをヴァイスが返済する形になったとか。また、借金返済が終わる頃になって、女性は彼の前から消えたそうだ。
◆終わり◆