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私が大人しいからと調子に乗って虐めていたのでしょう? 残念でしたね。そこまで大人しくはありませんよ

 私の婚約者フィレルとその母親はいつも私を虐めてくる。


 私たち二人が婚約することになった時、フィレルが母も含めて同居したいと言ってきて、乗り気ではなかったものの、私はそれを受け入れた。


 しかしそれが悪夢の始まりで。


 一緒に住み出したその日から、私は二人に虐められた。


 彼はことあるごとに私の振る舞いにいちゃもんをつけてくる。そして母親は、それを聞いて、というていで叱るようなことを言ってくるのだ。


 もちろん時には逆パターンもあるが——いずれにせよ二人は私を虐めることしか考えていない。


 しかし私はすぐには行動しなかった。というのも、いきなりそんなことを言って騒いでも誰も信じてくれないだろう、と考えたのだ。真実を話してもきっとまた私が悪者にされる。


 だから私は虐めの証拠を集め続けた。


 そうしてこらえること数カ月。

 私はついに行動に出る。


「フィレルさん、婚約は破棄とさせていただきます」


 私ははっきりと告げた。


 もちろん反発してきたが——これまでの虐めの証拠が私の手の内にあることを知ると大人しくなった。


「分かった、いいだろう。婚約破棄でも何でもしろ」

「ありがとうございます。……では、さようなら」


 こうして私たちの関係は終わる。


 その後私は虐められていた証拠を武器に彼らと戦い、勝ち、慰謝料をもぎ取ることに成功した。



 ◆



 あれから数年。

 私は今、国の役人として働く男性の妻になっている。


 一人目の子がもうすぐ生まれる——忙しくなるだろうが、きっと、喜びも待っていてくれるはず。


 もちろん夫婦二人での暮らしも楽しく充実している。


 そういえば、これは最近知ったことなのだけれど——フィレルとその母親はあの一件で社会的地位を失うこととなったらしい。


 同居していた婚約者の女性を母子で虐めていた、という話が世に出たことによって、二人の本性は皆が知るところとなってしまったようである。


 フィレルは勤め先のお偉いさんがその件について知って激怒したことによって退職させられることとなったそうだ。


 ちなみに、そのお偉いさんには娘がいたらしい。

 だから余計に腹が立ったのかもしれない。


 彼は今は無職となっている。


 母親は、とある福祉協会の名誉会長——お飾りではあるが——偉い扱いの役をしていたそうなのだが、「そのような人を置いておくわけにはいかない」という協会の判断で切り落とされてしまったそうだ。


 彼女もまた、地位と名誉を失ったのである。



◆終わり◆

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