婚約破棄ならお好きにどうぞ! 〜甘やかされすぎた彼はプライドだけが育ったみたい〜
「君のような女は僕には相応しくない! よって、婚約は本日をもって破棄とする!」
新興領地持ちの家の一人息子、両親から可愛がられ宝のように大切に大切に育てられた婚約者カルヴェン。
彼は、プライドだけが異常なまでに成長し、それとは逆に知能のレベルはかなり低いところで止まっている。
「夫となる僕に忠実になれない君は女として最低の人間だよ!」
「そうですね。では、私はこれで。失礼しますね」
勢いよく婚約破棄を告げられた私は、それを受け入れることを選んだ。
正直婚約破棄してもらえてありがたかった。
彼と生きるのは無理だな、と、密かに思っていたから。
◆
あれから十年が経った。
私は今、この国の第一王子の妻となり、城に住んでいる。
城での暮らしは慣れないことも多く苦労もあった。が、そろそろ慣れてきて。今ではかなり馴染めるようになってきた。最初はよそから来た私を良く思わない者も少なくなかったようだったけれどもさすがにもうだいぶ受け入れられてきている——変な意味ではなく——そう感じる。
そういえば。王子と結婚してまもない頃、私が王子の妻となったことを知ったカルヴェンは、わざわざ城へやって来ていろんなことを喚いていたらしい。
私の悪口とか。
王子の批判とか。
だが誰もそんな言葉は聞かない。
王子の指示により彼は不審者として扱われることとなり、警備の兵に拘束されて、牢に入れられたそうだ。
一度は解放されるも、それからもカルヴェンは不審な行動を繰り返し、先日ついに罪を犯して犯罪者の仲間入りすることとなったとのことだ。
もう無関係になっていて良かった……。
◆終わり◆