意地悪なことばかり言ってきていた彼は残念な最期を迎えたようです
「君は僕には相応しくないよ。容姿的にも、能力的にも」
私の婚約者ハルトハンは顔を合わせるたびこんなことを言う。
「本当なら君みたいな低レベルな女性と婚約者になるなんて絶対にしなかたのに」
彼はとにかく私を嫌っている。
そしてやたらと見下してくる。
「君ってホント教養がないよね、情けないし、頭が軽すぎるよ」
そんな彼に溜め息ばかりだったある日。
珍しく呼び出された。
「今日はね、婚約破棄について話そうと思って呼んだんだ」
ハルトハンは柔らかめの表情でそう言った。
彼と生きなくていい——天にも昇るような嬉しさ。
けれども喜びを顔に出し過ぎてはならない。感情を露わにしてしまったら逆のことをしてくるかもしれないから。婚約破棄を喜んでいる、ということを、ここで相手に認識させるべきではない。
「そうですか……はい、分かりました」
「いいね?」
「分かりました、受け入れます」
心の内側は最高の気分。
けれども表情は少し寂しげに。
「じゃ、さよなら」
「今までありがとうございました」
こうして私たちの婚約は解消された。
◆
その後私は実家へ戻って元々の趣味であったガラス細工に熱心に取り組むようになる。
そしてやがて有名になった。
ガラス細工に関する新たな技術を発明したのである。
私は好きなことで成功できた。
あのまま意地悪なことを言われつつ結婚しなくて良かった——運命にも彼にも感謝。
ちなみに、ハルトハンはというと、あの後散歩中に釘数本を踏んでしまったらしい。
そして、足裏にできたその傷が原因となって、最終的には落命したそうだ。
◆終わり◆