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婚約者が見知らぬ人といちゃついていましたので、婚約破棄とさせていただきました。

 その日は突然やって来た。

 私は見てしまったのだ——婚約者エブリスが見知らぬ女性と四肢を絡めていちゃついているところを。


「ねぇ、もっと、もっとしてぇ」

「それは後でな」


 私はその日ある用事があってたまたまエブリスの屋敷を訪ねていた。

 そして目撃してしまった、廊下でいちゃつくその場面を。


「えぇー。ひどぉーいー」

「仕方ないだろ」

「んもぅぉんー。泣いちゃうんだからぁ」

「泣くなよ、ワガママだな。ほら、甘く可愛がってやるからよ」

「やったぁーん」


 ちょうどそのタイミングで、エブリスは私が近くに立っていることに気づく。


「あ……」


 彼は半ば無意識で発してしまったような情けない声を発していた。


「こんにちは、エブリス。こんなところで何をしているの?」


 私は笑顔で口を動かす。


「あ……ち、違っ……」

「随分仲が良さそうね」

「ち、ちちち、ちがっ……ち、ちががが……違う! 違うんだ! これはっ!!」


 エブリスはかなり慌てている。

 まともに話すことすらできていない。


「私、貴方の婚約者の座はそちらの方に譲るわ」


 もとよりこの婚約は私が得するためのものではなかった。むしろ逆。彼側が私の家の力を得られるようになる、という婚約だった。


 だから私が彼を見逃す必要なんてない。


「そんなっ……」

「婚約は破棄。そういうことよ。では手続きに移らせていただくわね」

「待って! 待って待って待って!」

「さようなら、エブリス」


 こうして私は彼との婚約を破棄することにした。


 だって無理よ。

 他の女と気軽にあんなことができる人と、生涯を共にするなんて。


 その後私は婚約破棄のための手続きを着々と進め、最終的に、私たちの婚約は正式に破棄となった。



 ◆



 あれから十年が経った。

 時が経つのはあっという間だ、と言う人も少なくないが、私もそう思う。


 私はあの後しばらく実家で暮らし、やがて、伯父が紹介してくれた別の男性と結婚した。


 今は彼と共に生きている。

 家柄としては彼の方が下ではあるが、彼との暮らしに不満はない。


 一方エブリスはというと、別の女性と結婚したらしいがその時もまた不倫を繰り返し、やがて離婚を突きつけられることとなったそうだ。また、離婚のみならず、多額の慰謝料の支払いも求められたそうだ。



◆終わり◆

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