婚約破棄された私は彼と別れて別の人生へ〜そして彼の化けの皮は剥がれる〜
それはある春の日の朝のこと、婚約者ローザンに呼び出された私は彼の家へ向かった。
彼は整った容姿を持っている。
それこそ、婦人から大人気になるような、魅力的な目鼻立ち。
しかしそれは生まれながらのものではない——私だけがそれを知っている。
「悪いが婚約は破棄とさせてもらう」
「え」
「君と生きるよりずっと良い相手が見つかったんだ。なんせ君は本命じゃない、ストックだからな」
ローザンは平然とそんなことを言ってのける——それは彼の悪いところだ。
「さすがにいきなり過ぎませんか? せめて理由くらい教えていただけませんか」
「うるさい、さっさと出ていけ」
これは話しても無駄なやつだな、と察した私は、それ以上は何も言わなかった。
ややこしいことになる前に彼の前から去る、その道を選んだ。
◆
あれから数年。
私は今、医者の夫に同行し、国の色々なところを回っている。
毎日はとても忙しいが、喜びもある——他人のために何かできるという喜びだ。
そういえば、この前凄く久しぶりに実家へ帰った時に親から聞いたのだが、ローザンはあの後大変なことになったらしい。
これまで散々『美の秘訣伝授』だなんだと商売をしてきたのに魔術整形をしていたことが発覚して問題になってしまった、ということだそうだ。
◆終わり◆