婚約破棄ですべてが終わるわけではありませんから、必要以上には気にしないようにします。
「お前のような家事もまともにできず俺に従う気もない女とはやっていけない。よって、婚約は破棄とする」
それはある晴れの春の日のこと。
私は突然そんなことを言われてしまった。
意外だった。彼が私をそんな風に見ていたなんて。
でも今さら何を言っても聞いてはもらえないだろう。今までも揉めた時はそうだった。彼はいつも自分の主張ばかりを強く続け、私の言い分なんて少しも聞こうとはしない。いつも、どんな時も、私に言い返す権利なんてないのだ。
こうして私は、呆れるくらいあっさりと、切り落とされてしまうこととなった。
私たちは確かに婚約者同士だった。
けれどもこの日を境に他人になった。
◆
あれから十五年。
私は今、伯父の紹介によって知り合った領地持ちの家の次男である男性と結婚し、二人で一つの家に住んでのんびりと暮らしている。
領地の管理はしなくてはならないからやはり日々苦労はあるけれど。それでも私はこの人生を後悔はしていないし、むしろ、この道を選んだことを良かったと考えている。
穏やかな夫と共に生きられる、それが何より幸せだ。
そういえば。
これは先日私の父から聞いた話なのだが。
元婚約者の彼は私と別れた後一人の女性と結婚したらしい。
しかし結婚した直後に女性側に問題があったことが判明。
家族間での喧嘩にまで発展し、結局、二人は離婚に至ってしまったそうだ。
◆終わり◆