他人を傷つけて手に入れた幸せが続くはずもありません (前編)
婚約者アルペンには可愛がっている女の子がいる。
彼より二つ年下で、名はカーネリアという。学園に通っていた頃の後輩らしく、アルペンの卒業後も交流を続けているらしい。
アルペンはよく彼女との話をする。
二人は、毎週のように顔を合わせては、お茶をしたり酒を飲んだりするらしい。また、少し時間がある時には、お出掛けをすることも少なくないとか。学園の卒業生の中には二人が恋人だと勘違いしている者も少なくないらしい。
私は正直それを良く思っていなかった。
婚約者がいるのにどうしてそんなに遠慮がないの、などと、つい思ってしまって。
そんな最中、私はアルペンに呼び出される。
「実は話があるんだけど」
「話?」
「カーネリアに子どもができたんだ」
「えっ」
聞いた瞬間はさすがに驚かずにはいられなかった。けれども、時間が経つにつれて、段々理解できてきた。心が追いついてきた。
厳密には、納得できてきた、という感じ。
あれだけ仲良くしていたのだ、そういうことになっていたとしても不自然さはない。ある意味自然な流れとも言えるだろう。二人きりになる時間が多かったのだから。
「そういう関係だったの……?」
「あ、あぁ。実は、そうなんだ。といっても、毎日とかではないよ。数回だけ」
そういう行為に至ったのが百回か千回か十回かなんて、あまり関係ない。
未来を誓った者がいるにもかかわらず別の人とそういうことになる、ということ自体が、問題行動と言えるのだから。
「貴方前に言っていたわよね? カーネリアさんとはそういう関係じゃないって」
以前一度訪尋ねたことがあった。
なぜそんなにも定期的に顔を合わせるのか、と。
その時彼は怒った。目尻をつり上げ、鬼の一種であるかのような顔をして、私に怒声を浴びせた。こちらは落ち着いた調子で訪ねただけなのに、である。
何となくそんな気はしていたけれど、やはり、あの時言っていたことは嘘だったようだ。
そもそも何かがおかしいと思っていたのだ。少し質問しただけで怒鳴り散らされるなんて不自然としか言い様がないから。やましいことがないなら、尋ねられても怒り出したりはしないはず。何でもないなら、自然な感じで答えを述べれば良いだけではないか。
そうできないということは……。
必死になって否定して怒るということは……。