婚約破棄されましたので、婚約者とその妹の罪を世に出します。
「本日をもって、君との婚約は破棄とする! なぜなら、君が僕の妹を虐めていたことが発覚したからだ!」
何を言っているのだろう、この人——婚約者ベルガーは。
「虐めていた? ふざけたことを。私は妹さんを虐めてなんていません」
「とぼけるか!」
ベルガーはいつもこう。
一度思い込むと私の発言をまったく聞かなくなる。
「ですから、虐めてなんていないのです。話を聞いてください」
「まだ嘘をつくか!」
だが私には剣がある。
最強の剣が。
「……脱税の件、ばらしますよ?」
そう、私はベルガーとその妹がやらかしていることを知っているのだ。
「なっ……卑怯な。そこまでして婚約者でいたいのか」
「いえ。婚約破棄は構いません。ただ、私が妹さんを虐めていたという発言だけは、撤回してください——嘘ですから」
ベルガーは顔を強張らせたまま。
「撤回……う……し、仕方ない。今回は見逃してやる」
なぜに上から目線?
「私は妹さんを虐めていません。そうですよね。なら、貴方の言葉でそう言ってください」
「くっ……ああ、認めよう。君は妹を虐めていない……」
「ありがとうございます」
最後は笑顔で。
「では婚約破棄された私は去りますね。さようなら」
その後私はベルガーと妹の脱税を世に出した。
それにより、二人は社会から批判を受けることとなった。
ベルガーらには罰金が課されることとなったらしい。
また、批判者がベルガーの家に押し掛けてくることが続き、それにより妹は精神的に追い詰められて自殺未遂を起こしたそうだ。
だが正直気の毒とは思わない。
なぜって?
簡単なことだ。
ベルガーの妹はいつも私に関する嘘を言っていた。
そんな人に同情なんてするわけがない。
◆終わり◆