私を虐めていた婚約者の母は最終的に奴隷扱いとなったそうです
私——エメリアは、金髪の青年マーチスとの婚約を機に、彼の実家に同居することになった。
最初は乗り気でなかったのだけれど。彼がどうしてもと言うから仕方なく私はそれを受け入れて。そうして彼の実家で暮らすようになった。
だが問題は小さくなかった。
マーチスの母親は私のことを嫌っているようで、ことあるごとに嫌がらせをしてくる。また、その嫌がらせの内容も日に日に悪化してきて。最初のうちは笑って流せるものも少なくはなかったが、段々本格的に嫌になってきていた。
そんなさなか。
「エメリア、君との婚約を破棄する」
マーチスがそう宣言した。
「母から聞いたぞ。君は僕の母を虐めているそうだね」
「知りません」
「とぼけるな! 母に手を出す者は誰であろうが許さない!」
「ですから、私は何も知らないのです」
本当のことを言っても理解してもらえない。
どうしようか、と迷っていると。
「マーチス様」
屋敷で働く一人の女性がやって来た。
「なんだ雑魚」
「エメリア様はそのようなことはなさっていません。マーチス様はお母様に騙されています」
女性ははっきりと言ってくれた。
私の味方をしてくれるようだ。
「むしろ逆なのです。マーチス様のお母様がエメリア様を虐めている——それが真実です」
「はぁ? わけが分からんことを言うな」
「貴方はお母様のことを信じ過ぎているのです」
「う、うるせぇ! 黙れ雑魚!!」
女性は溜め息をついて、それから私の方を見る。
「間違いありませんね? エメリア様」
「あ……は、はい。ありがとうございます」
結局私は婚約破棄されてしまった。
ほんの少しの慰謝料だけ。
それでも嬉しいこともあった。彼の母親に虐められることがなくなったこと、それは言葉にならないくらい嬉しい。狭い世界で一方的に虐められ続ける痛みは大きい。でもだからこそ、解放された時の喜びも大きいのだ。
ちなみに、あの時味方してくれた女性は、クビになったのでうちで雇うことにした。
◆
「エメリア様! また寝坊ですか!」
「ごめん」
「もう……いつもですね」
「ごめんって」
あれから数年。
今は、両親と私とあの時味方してくれた女性の四人で、一つの家に住んでいる。
穏やかな時間が流れている。
そういえば、マーチスはあの後別の女性と結婚したらしい。結婚相手の女性は美女だそうだ。
ただ、非常に気が強くわがままだそうで。
その女性が家を牛耳っているらしい。
マーチスの母は毎日奴隷のように扱われ、人権のない雑用係のようにされているらしい。今やマーチスの母は朝から晩まで命じられたことをひたすらにこなすだけの奴隷に成り下がっているそうだ。
◆終わり◆




