いきなり「俺の前から消えてもらっていい?」とか言われました。
ある日のこと、急に呼び出されたと思ったら、婚約者ヴェローニにへらへらした笑みを向けられる。
「あのさぁ、俺の前から消えてもらっていい?」
「え」
「婚約破棄。したいんだよね」
きょとんとしてしまう。
「何だその顔、なっさけね」
「事情を説明してくだ——」
「はぁ!? 何だそれ!? 何で俺が説明せにゃならん!?」
逆切れするヴェローニ。
どうやらまともな話し合いをするのは無理そうだ。
「分かりました、婚約破棄ですね。それでも構いません。ただ……慰謝料は少しでも払っていただきますので」
「はあぁ?」
「では失礼します。さようなら」
私は話をすることは諦めその場から去った。
その後父親の知人でそういうことに詳しい人に相談し、知識を借り、慰謝料の支払いを求める手続きを行う。
そして無事支払ってもらうことができた——といっても少額だけれど。
でもそれでもいい。
少しでもいい。
私の目的はお金を儲けることではないから。
その後私は実家で過ごし、結婚もして、充実した生活を送った。
一方ヴェローニはというと、あの後散歩中に馬車と激突し即死してしまったそうだ。
◆終わり◆