忠実でなさにうんざり? ふざけたことを言いますね。まぁ、婚約破棄なら好きにすればいいですけど
「お前の忠実でなさにはうんざりだ! 婚約は破棄とする!」
ある快晴の日。
婚約者ゴモラージェスに突然呼び出されたと思ったら、そんなことを言われてしまった。
忠実でなさ? なら忠実さって何? 言いなりなることなのか、何を言われても絶対に首を横に振らないことなのか。いずれにせよ、そんなものを受け入れることはできない。だって当たり前のことだろう? 誰も自ら喜び勇んで奴隷になんてなりたくない。
「分かりました」
「つまり、本日をもって我々は他人となるということだ。いいな?」
「はい」
「いいんだな? 本当に分かっているのだな?」
何なんだ、いちいち……。
「はい、理解しています」
「後で泣いても駄目だ」
「ではもう他人ですので、これで失礼しますね」
無関係になった人と話すことなどもはやない。
私はその場から離れた。
◆
婚約を破棄された私は実家へ戻り、しばらくはそこで暮らした。両親は事情をしっかり聞いて理解してくれていたので、過ごしづらさはなかった。味方してもらえていたし。
その後母親の知人が紹介してくれた男性と顔合わせてみることとなった。最初はあまり乗り気ではなかったけれど、言葉を交わしているうちに段々分かり合えるような気がしてきて。会うことを繰り返すうちに親しくなったので、自然な流れに乗るようにして彼と結婚した。
今は、彼と子ども一人で、のんびり暮らしている。
ちなみにゴモラージェスはというと。
あの後結婚詐欺に引っかかってしまい全財産を失ったそうだ。
◆終わり◆