超絶のんびり令嬢は何事にも動じない! 〜しかし穴にははまる〜
令嬢エリーゼは幼い頃から鈍感だった。
良く言えばのんびり。
そんな彼女は周囲の人たちから『超絶のんびり令嬢』と呼ばれることも多かった。
そんなエリーゼは婚約を機に婚約者の家に同居することになった、のだが……。
「エリーゼ、君みたいな馬鹿とはやっていけない。婚約は破棄とさせてもらう」
婚約者から別れを告げられてしまった。
「え……? 婚約、破棄……?」
「あぁそうだ」
「では今夜の食事は……?」
「ああもう鬱陶しい! いいから出ていってくれ!」
「はい……」
エリーゼは婚約破棄されたこと自体には動じていない。
が、婚約者の家から自宅に帰るまでに、十回穴にはまった。
穴にはまりつつも自力で地表にまでたどり着く、それを繰り返し、エリーゼは何とか家に帰った。
幸い怪我はなかった。
それからエリーゼは両親と三人で暮らすようになった。
彼女はいつも柔らかく笑っていた。
実家で両親と暮らすようになってからも定期的に穴にははまっていたが、彼女はいつも幸せそうであった。
一方、エリーゼの元婚約者の彼はというと。
ある日の夕暮れ、家の周りを散歩していると突然穴に落下し、その際に全身を強打して落命してしまった。
◆終わり◆