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ある春の日のこと、彼は私に婚約破棄を告げました。〜そして破滅する〜

 それはある春の日のこと。

 話があるから来てほしい、と呼び出され、私は婚約者のところへ向かった。


 彼は妙に真剣な顔。


「いきなりになって悪いが、婚約破棄させてもらう」


 彼はふざけるでもおどけるでもなく言ってきた。


「君とはもうやっていけない。ただし、理由はきちんと説明する、伝える」

「は、はい……?」

「まずその地味で華のない顔面が無理だ。それに、真面目で身が固すぎて素直に従ってくれないところも無理だし、四六時中忠実でないというところも無理。それが婚約破棄の理由だ」


 確かに私は美女ではないかもしれない。

 しかしそれでも、地味で華のない顔面、などと言われたのは初めてのことである。


 もっとも、普通は人に対してそんなことを言いはしないものなのだが。


「そうですか」

「……何を言われているのか本当に分かっているか?」

「はい、もちろん。分かっています。婚約破棄でしょう? ……では私はこれにて失礼しますね」


 軽く一礼、その場から去る。


 私が速やかにその場から離れることを選んだのは、彼と話したいことなんてもうなかったからである。


 婚約破棄された後、私は父親の知り合いの息子と顔を合わせることになり、乗り気にはなれないものの一度会った。


 その時はしっくりきたわけではなく、あっさりと終わったのだけれど、向こうは私を気に入ってくれたみたいで。そういう事情もあり、仕方なくもう一度会うことになった。


 そこで共通の趣味があることが判明。

 急激に親しくなって結婚した。


 ちなみに、元婚約者の彼はというと、婚約者がいる時に別の女性と濃密な関わりに至ってしまったがために婚約破棄されることとなったらしい。また、女性側が婚約破棄の理由もはっきり公開したため、元婚約者の彼は笑われ者嫌われ者になってしまったそうだ。


 道を歩けばひそひそ話をされ、時に石を投げられることもある。


 その結果、彼は心を病み、最終的には自ら命を絶ったそうだ。



◆終わり◆

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