きっともう何を言っても無駄なのでしょう。それなら私は速やかに去ります。
「本日をもって、君との婚約は破棄とする」
婚約者フルーベリンからそう告げられたのは、ある日の夕暮れだった。
「え……」
「婚約は破棄する、と言ったんだ」
すぐには理解できなかった。
でも彼の顔を見ていたら「きっと何を言っても無駄なのだろうな」とは掴めて。
「そうですか……分かりました。婚約破棄を受け入れます」
だから私はもうそれ以上何も言わず、フルーベリンの前から去ることにした。
正当な理由のない婚約破棄、ということで、私はフルーベリンから慰謝料を支払ってもらうこととなった。
それほど大きな額ではないけれど。
けれどもべつにそれでいい。
だって私は儲けたかったわけではないから。
その後私は実家へ帰りのんびりと暮らした。そうして数年が経った頃、母の知人が一人の青年を紹介してくれて。圧をかけてすすめられたので会ってみたことをきっかけに、その青年と親しくなり、私たちは結婚するに至った。
今は彼と穏やかに暮らしている。
ちなみに、フルーベリンはというと。
あの後、とても熱心に尽くしてくれる女性と結婚したそうだ。
しかし超束縛女だった。
それで、フルーベリンはありとあらゆることを禁止され、心を病んでしまったそうだ。
◆終わり◆