掴めない女とは生きていけない? べつにそれでも構いません、何とでも言っていれば良いのです
「悪いが、君のような掴めない女とは生きていけない。よって、この婚約は破棄とさせてもらう」
私はある日突然婚約者ヴェン・ジェノハイドから婚約の破棄を告げられた。
聞いた直後は何が何だか分からなくて。
つい言葉を失ってしまった。
すぐには何も言い返せなくて——。
「何をぼんやりしている? さっさと出ていってくれ。もう我々は婚約者じゃない」
「あ……」
「遅い! はぁー。おい、そこの! この馬鹿女をさっさと追い出せ!」
ヴェンから指示された使用人によって、私は家から追い出された。
もはや言葉を発することすら許されなかった。
◆
「……ってことで、帰ってきたんだ」
両親は急に帰ってきた私を見て驚いていた。
無理もない——本当に急だったから。
しかし、ここに至った経緯を説明すると、両親は事情を理解してくれた。父親はヴェンの行いに憤慨し、母親は呆れ顔でそんな男性は放っておいていいと言ってくれた。
それから私は両親と一緒に暮らした。
その日々はたくさんの喜びに満ちていて——彼と別れたことを後悔する瞬間はなくても、彼と別れたことを良かったと思う瞬間は多くあった。
ちなみに、後に親から聞いた話によれば。
ヴェンはあの後恋人の女性と結婚したらしい。しかし、夫婦として暮らすうちに価値観の違いが表れてきて、段々険悪になり。夫婦喧嘩をすることも増えたらしい。
そんなある日、ヴェンは、夫婦喧嘩の最中に妻を殺してしまって。
それにより彼は殺人犯として牢へぶち込まれてしまったそうだ。
◆終わり◆