お固い女とはやっていけない? 私はべつにお固くなんてないと思いますが……まぁ、好きなようになさってください
「テメェみてぇなお固い女とはやってけねぇよ! てことで、婚約は破棄! いいな?」
遊び人の婚約者フォルトがそんなことを言ってきた。
けれどもそこに悲しさはなく。
むしろ彼と離れられる嬉しさが勝る。
「はい、分かりました」
「あーあ! せいせいするわ!」
そんなことを本人の目の前で言うなよ……、と思いつつも、私は静かに一礼して去った。
フォルトはとにかく遊び人で、毎日違う異性を連れて夜中まで遊びまわっているような人だった。そんな彼を私は嫌っていた。私たちは根本的なところが違っていて、性格が恐ろしいほど合わなかったのだ。
婚約してしまったものは仕方がないので、強く意見を言うことはしなかったけれど。
ただ、いつの日か彼から離れられることを願っていたというのは、紛れもない事実である。
その後、私は、ちょっとしたことをきっかけに西国の権力者の息子と知り合う。何度か会って関わるうちに親しくなっていって。それでついに私たちは結ばれることとなった。
「これからも果物の話を聞かせてちょうだいね」
「もちろんだよ」
「あ、そうだ、果物狩りなら任せてちょうだい」
「うん! 助かるよ!」
こうして私は彼と幸せになったのだが。
一方でフォルトは幸せにはなれなかったようだ。
というのも、結婚式の一週間前に奇病を発病してしまい、それを理由に相手女性に逃げられてしまったそうなのだ。
フォルトに残されたのは、奇病に蝕まれた肉体のみ。
◆終わり◆