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婚約破棄ですか? 好きにしてください。私は別に色々言う気はありませんので。
「いきなりなことは謝るが、婚約破棄させてもらう」
婚約者からそう告げられたのは、ある春の日だった。
唐突に呼び出され珍しいなと思っていたら案の定これである。
「そうですか、分かりました」
「物分かりが良くて助かる」
「それではさようなら」
「あぁ、ではな。せいぜい幸せになってくれ」
こうして私たちの関わりは終わった。
◆
あれから数年、私は今、王族が暮らす城に住んでいる。
色々あって第三王子の妻となったからである。
慣れないことは確かにあるし、苦労がまったくないわけでもないけれど、それなりに楽しい日々。
満足している。
これはあの後親伝いに知ったのだが。
元婚約者の彼は都合のいい儲け話に乗ってしまったがために資産を失ったうえ犯罪者として牢にぶち込まれてしまったそうだ。
◆終わり◆