忠実であれ? ふざけないでください、意味不明です
ある日のこと、婚約者ベリグリーズマンに呼び出されたと思ったら。
「君のような男に対して忠実でない女とは生きていけない。よって、婚約は破棄とする」
はっきり宣言されてしまった。
そもそもこの婚約を希望したのはベリグリーズマンの方だ。こちらから頼んで婚約してもらったわけではない。なのにどうして私がこんな目に遭わなくてはならないのか。なぜこんな風に言われなくてはならないのか。
それに『女は絶対忠実であれ』という発想自体が身勝手だ。
婚約者というのは言いなりにする存在なのか?
それは奴隷の間違いではないのか?
「そうですか、分かりました。ではこれで失礼します」
「なっ……」
「まだ何かありましたか?」
「あ……い、いや」
「ですよね。では私はこれで失礼します」
私はベリグリーズマンの前から去った。
二度と会うことはないだろうな、と、密かに思いながら。
私は実家に戻って自由を謳歌。そんな状態で数年を過ごし、私生活で親しくなった人と後に結婚した。
私が選んだ彼とであれば、たとえ壁があってもきっと乗り越えてゆける。
今はそう信じている。
ちなみにベリグリーズマンはというと。
あの後突然の体調不良に襲われ、原因も分からぬままに亡くなったそうだ。
◆終わり◆