パッとしない? 酷い言い方ですね。まぁ、べつに、何とでも言っていれば良いですけど
「君のようなパッとしない娘を妻にするなど僕のプライドが許さない。僕の妻なら麗しく皆に憧れの眼差しを向けられるような女性でなければ。よって、この婚約は破棄とする」
婚約者バファルンはある日私を呼び出してそう告げた。
確かに私は道行く人たちが振り返るような美女ではない。けれども、自身が劣化していかないようできる限り努力はしているし、直接『パッとしない』なんて言われる筋合いはないはずだ。
「随分勝手な婚約破棄ですね」
「知るか。僕の人生は僕が決める。君に決定権なんてない」
「それもそうですね。ではさようなら」
こうして私はバファルンの前から去った。
以降、私たちが顔を合わせることはなかった。
けれども残念ではない。
そもそも、あんなことを平気で言ってくるような人とは会いたくない。
その後私は父が営んでいる時計屋で手伝いを始めた。そこで手伝いをしているうちに段々興味が湧いてきて。それで、私はその道へ本格的に進むことを決めた。
そして私は時計屋として生きた。
数十年後に聞いた話によれば、バファルンはあの後借金だらけの女性にハマり、最終的には全財産を失うこととなったそうだ。
◆終わり◆