婚約破棄したいならしてください。私は私の人生を歩むだけですので。
私の婚約者ベルーガ・ベルムンハルントは性格が良くない。
甘やかされて育ったからか自分勝手で他人の心へ目を向けようとは一切しない。それに彼は自分の意見が一番優先されるのが普通だと思い込んでいて、そうならない状況に遭遇すると突然怒りを爆発させる。問題がない時にはそれなりに優しい時もあるのだが、思い通りにならない状況になると豹変し、途端に性格が最悪になる。
「だからテメェは最低だって言ってんだよッ!」
「はぁ……」
「聞いとんのか? あぁ?」
「怒らず冷静に話してください」
「あぁん? 俺のどこが冷静じゃねぇってんだ! テメェみたいなん受け入れてる俺は心広いだろが!」
ベルーガは続ける。
「あぁもううぜぇな! 婚約破棄! 婚約破棄だッ!!」
この日、私たちは終わった。
でも私に悲しさはなかった。
むしろ爽やかさを感じていた。
今の私には見える。
新たな人生への光が。
その後私は街で一人の青年と知り合う。
特に深い意味はなかったが、喋っていると楽しくて、私たちは自然と親しくなっていった。
彼は隣国の歴史ある領地持ちの家の息子だった。
私はやがて彼と結婚することになった。生まれ育った国を出ることには不安もあったけれど。でも、彼がいてくれたから、心強さもあって。私は彼と行く道を選んだ。
「君のことを母に話したら早く会いたいって言ってたよ」
「そうなの?」
「うん。聞いてみたいこととか色々あるって」
「それは楽しみ」
ちなみにベルーガはというと。
一人の女性と親しくなって結婚し子も設けたそうだが、ある時妻と喧嘩になった拍子に感情的になり手を出してしまい、妻と子を殺害してしまったそうだ。
そして今は牢に入れられているらしい。
もちろん、殺人犯として。
◆終わり◆