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人を侮辱することしかできない婚約者とは別れられる方がラッキーです。

 私の婚約者フルベンガインは、人を侮辱すること以外に得意なことがない。


「おい! クソ女! さっさと飯出せよ!」

「それはまだ私の仕事ではないのですが……」


 彼はいつも私に傷つけるような言葉を投げかける。


「はぁぁ!? 喧嘩売ってんのかぁ!? それでなくともゴミなんだからよぉ、飯出せやぁ!」

「話を聞いてください」

「うるせぇわ! あーあ、クズ女ウゼー。……決めた。こうなりゃ婚約は破棄だ! 婚約破棄してやる!!」


 だからこの言葉を待っていた。


「そうですね。私では力になれませんね」


 私は一枚の紙を差し出す。


「ここにサインお願いします」


 そう、これは婚約破棄のための書類。


 彼が婚約破棄を言い出す日を待ちつつ作成していたもの。


「あぁ? なんだぁこれ?」

「ここにサインしていただければ私との婚約を破棄できます」

「あぁそうかよ。……ほら、これでいいな」

「ありがとう。では失礼します」


 彼は今さら戻ることもできず、サインするしかなかった。


 婚約破棄の書類には『自身の意思で婚約を破棄することにしました。慰謝料は支払います』というような意味のことが書かれていた。


 けれどもフルベンガインはそれに気づかなかったようだ。


 でもそんなことは関係ない。


 彼はこの紙にサインした。

 それはここに書かれていることに納得したということである。


 その後私はフルベンガインに慰謝料の支払いを求める。彼は意味が分からないと喚いていたようだが、そんなことをしても義務は義務。支払うよう言われれば支払うしかないのである。


 最初は支払い拒否していたフルベンガインだったが、やがて心が折れ、慰謝料の支払いを仕方なく受け入れた。


 その後私は実家のパン屋を継ぎ、さらに大きな店へと進化させていく。

 仕事に追われる日々でも幸せに満ちていた。


 後に聞いた噂によれば、フルベンガインはあの後親から勘当を告げられたそうだ。

 喧嘩になり言い合いの最中に母を殴ってしまったから、らしい。

 親に追い払われたことで住む場所を失ってしまった彼は、長時間労働低賃金で働き貧しい暮らしをする外ないという状況になってしまっているそうだ。


◆終わり◆

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