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突如婚約破棄されました! 〜けれども私は貴方以外何も失いません〜

「テメェみてぇなくっだらねぇ女には付き合っていけねぇワ! こんな婚約、破棄だァン!」


 婚約者フォムトブルバンは、ある日のこと、私を呼び出してそう宣言した。


「そうですか。では、失礼します」


 私は彼の前から去る。

 もはや彼への心残りはない。


 だが、何かを諦めることはしない。


 フォムトブルバンに縋りつくなんてことはしないけれど。

 彼だけは手離すけれど。


 けれども、彼という存在以外のものは、何一つこの手から離すつもりはない。私の幸せなんてもっとも。婚約が消えても、それで不幸になると決まったわけではない。それなら私は生きてみせよう、誰よりも幸せに。


 唐突過ぎた婚約破棄から五年、私は、隣国から仕事でこの国へ来ていた資産家に見初められ結婚した。


 今は彼の国へ行って二人で暮らしている。

 慣れない国での生活には大変さもあるけれど、それでも、理不尽なことを言われるよりかはずっといい。


 私はここで生きてゆく。

 その覚悟ならもうこの胸に在る。


 ちなみに。


 フォムトブルバンはというと、私と別れた数ヶ月後に全身が膨張する奇病にかかり、それによって仲良かった恋人に別れを告げられてしまったらしい。そして、奇病と共に、心の病も患うこととなってしまったそうだ。



◆終わり◆

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