フロイデンの四王子には問題が多過ぎる
フロイデンの四王子は女関連の問題が絶えない。
平和主義を違う王国フロイデン。そこは、四季に恵まれたくさんの食べ物を得ることができる、数多ある国の中でも特に幸せな国。とにかく恵まれている、それがフロイデンだ。
私は四王子を近くで見てきた。
これは、私が色恋沙汰に巻き込まれたという話ではない。ただ、家柄ゆえに四王子と顔を合わせることも少なくなかった私が見てきた、彼らの行いである。
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第一王子であるイチンは、現在三十歳。
人当たりが良く異性にも親切。年齢を重ね落ち着いてきつつあるものの、綺麗な金髪と整った目鼻立ちがくすむことはない。しかし、その魅力ゆえに多くの女性を誤解させてきた。そしてそれがいくつもの悲劇を生むこととなったのもまた事実だ。
彼の周りにはいつも女の話がまとわりついている。
もっとも、己の行動がそういうことを招いているという自覚はないようだが。
彼が十八の春、最初の事件は起こった。
イチンに惚れていたある貴族の令嬢が、気にかけてもらおうと考えて自分の家に火を放ったのだ。彼女は突如火災に見舞われた悲劇のヒロインを装っていたが、結局、彼女が放火したのだった。
後にそのことが明らかになったが、既に失われた命は戻らない。
残念なことに、既に失われた命には彼女の親や兄も含まれていた。
また、それからも、イチンに惚れた女性たちの狂気的な事件は続いた。彼に惚れた女性は皆、狂気の海に落ち、懸命に泳ぐようにして危険な行動に出るのだ。最初の事件の令嬢だけがどうかしていたわけではなかった。
それでもイチンは、時に女性を愛し、時に女性を振り回す。
無自覚なのだからタチが悪い。
第二王子ニイーンには婚約者がいた。
世には「互いを想い合う理想を絵に描いたような二人」と伝えられていた。
だがそれは事実ではなく。実はニイーンは婚約者を愛してなどいなかった。婚約者はニイーンを慕っているようだったけれど。つまり、ほぼ婚約者の片想いのような状態。ニイーンにとって、婚約者はどうでもいい存在だった。
ニイーンは何人も愛人のような存在を作り、来る日も来る日もその人たちと遊んでいて。そのことに耐えられなくなった婚約者は、ある秋の夜、湖に飛び込んで命を絶った。
しかし、この件に関しては、正確に世に伝えられることはなかった。
ニイーンの婚約者は不運な事故で亡くなってしまったことに。事実は歪められ、本当のことは国民には伝えられなかったのだった。
第三王子のカルビンは、現在二十五歳。
ニイーンより一つ年下。
彼は年上から好かれるタイプで、夫人から可愛がられることが多かった。幼い頃愛らしい容姿だったということも影響しているかもしれない。が、大人になってからもその人気に陰りが見えることはなかった。
ある時、カルビンは、四十二歳の赤毛の夫人からお茶の誘いを受けた。カルビンは誘いを受け、一緒にお茶をすることにしていた。しかし、その前日に、四十六歳の夫人がカルビンを呼び出した。そして彼女は、前もって入っていたお茶の話をなしにするよう告げた。カルビンは仕方なく四十二歳の赤毛の夫人のところへ行き、事情を説明。
その日の晩、四十二歳の赤毛の夫人と四十六歳の夫人が大喧嘩をした。
喧嘩は殴り合いにまで発展し、しまいに、二人はぴったりくっつくようにして窓から転落して亡き人となった。
以降も、カルビンに関しては、そういうような事件が絶えなかった。
国民の中には彼を『絶望の天使』と呼ぶ者もいるらしい。
第四王子であるヨヨンは、現在二十三歳。
彼とにかく多くの異性と肉体関係を持っていることで有名だ。
彼の場合、恋愛にはあまり興味がない。ただ、身体が非常に活発であり、異性を見ればすぐにベッドインするくらいの勢いがあるのだ。
日頃は冷静な判断ができない人ということはなさそうなのだけれど……。
彼もまた、多くの問題を起こしてきた。
身分の高い女性が子を宿して大騒ぎになったり、逆に貧困層の女性尊い関係を持って大騒ぎになったり。とにかく問題が尽きない。もっとも、その面以外はまったく問題ないのだけれど。
ちなみに、彼にはかつて婚約者がいた。
しかし今はいない。
ヨヨンがいろんな人と関係を持っていることにげんなりした婚約者が婚約破棄を告げてきて、ヨヨンはそれを受け入れたのである。
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これがフロイデン四王子の行いである。
彼らには問題が多過ぎた。
しかも、その問題のほとんどが、すんなり治るようなものではなかった。
ちなみに、ニイーンだけはもうこの世にいない。
半年ほど前、突然発狂し、城から飛び出して行った。その時は偶然会った木こりに捕獲されて無事で。それから医師に精神疾患の一種と判断され、多くの時間を自室で過ごすようになっていた。状態は安定していた。
が、二週間前、突然自室から出るとねまきのまま国で一番背の高い木に登った。
そして彼は飛び降りた。
あれは何だったのだろう……。
◆終わり◆