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婚約破棄を告げられた日、同居開始となりました。

 婚約者の彼と結ばれ、夫婦として生きていく。


 彼は私の夫。

 私は彼の妻。

 いつかは子も生んで、子孫を残し、年を重ねていずれは死ぬ。


 そんな人生だと思っていた。


「おまえとの婚約は本日をもって破棄とする」


 婚約者アベロンからはっきり告げられる、その日までは。


「え……」

「聞こえなかったのか? 婚約は破棄、と言ったんだ」

「ま、待ってください。いきなり過ぎます。そんな、どうして……私の行動に問題が? でもそれならいきなり婚約破棄ではなく問題点を言ってくだされば……」


 すると彼は死ぬほど不愉快そうな顔をした。


「いいから出ていけ」


 私は彼の家から追い出された。


 普通の人生、行くと思っていた道、すべてが消え去った。

 とても信じられない。

 こんなことになってしまうなんて。


 雪降る中、私は実家へ戻ることとなった。



 ◆



 だが実家へ戻っている最中に一人の男性と出会う。


 男性と言っても単なる人間の男性というわけではない。彼は魔族とのハーフであり、容姿も人間とは少し異なっている。おおよその見た目は人間なのだが、長い爪が生えていたり耳が鳥の翼のような形だったりするのだ。


 話によれば、彼は幼い頃に親を亡くしたらしい。

 で、人間だった父側の親戚に引き取られた。

 しかしその普通でない見た目ゆえに嫌われ、捨てられてしまったそうだ。


 それからは一人山の中で生きてきたとのこと。


 帰り道に出会った彼と同居することになった。


 まぁこちらから頼んでみたのだが……。


「家に帰らなくていいの?」

「はい」

「本当に?」

「私がここにいたいので! どうせ実家へ帰っても良いことなんてありませんし」

「そう……」


 実家へ帰って何になる?

 それで心が救われるのか?


 この時の私は少々ヤケクソになっていて、普段であればしないようなことをした。


「これからよろしくお願いします。私にできることがあれば何でも言ってください」

「あ……う、うん」


 こうして、ただの人間ではない彼ヤンベとの同居が始まった。



 ◆



 数年後。


「ヤンベ! 大きい猪が獲れたわ!」

「う、うわぁ……」

「何よその顔、嫌なの?」

「ううん! でも凄いなぁ、そんな大きいのを獲るなんて」


 あれからも私はヤンベと共に暮らしている。

 私は今は獣を狩る役をしている。

 頑張れば頑張るほど美味しい肉が食べられるから、この役が好きなのだ。


「じゃあ料理するよ」

「ありがとう! ヤンベの作るのは何でも好きよ!」

「照れるなぁ、へへ」


 ちなみにアベロンはというと。

 あの後、魔族の一種である大型の獣の群れに家に入られ、襲われて亡くなったそうだ。



◆終わり◆

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