緑髪令嬢はその珍しい色の髪のせいで婚約破棄されるも彼女なりの幸せを掴む!
齢十八のアルナベルは生まれつき緑色の髪を持つ。
翡翠のようなその髪色はとても美しく、しかしながら周囲と違っていることからいじめられることも少なくはなくて。ただ、母親がいつも心理的に護り支えていたこともあって、アナルベルはひねることもなく純粋に育った。
だが、ある日のこと、婚約者ダイガンから告げられてしまう。
「その緑色の髪、気味が悪いんだよな。そんな髪が子孫に出たらと思うと恐ろしいよ。ということで、婚約は破棄な。おかしな色の髪の女とはやっていけないから、もう俺の前から消えてくれ」
ダイガンはそれが当たり前であるかのような顔つきでそんなことを言い、アナルベルを一方的に切り捨てた。
髪色のせいで突然婚約破棄されたアナルベルは悲しみの海に沈む。
彼女はしばらくまともに食事をとることさえできなかった。
ただ、それでも、彼女の母親は彼女を支え続けた。
「アナルベル、貴女は悪くないわ。理解してもらえない人と無理に結ばれることなんてないのよ。貴女のことを理解して受け入れてくれる人はきっといる、だから大丈夫よ」
アナルベルの母親はいつもそう声をかけていた。
ダイガンに別れを告げられてから数ヵ月は体調を崩していたアナルベルだったが、次第に回復し、一年もすればほぼ以前のような暮らしができるようになった。
その頃に彼女は母親から紹介された青年と知り合いになる。
その青年はアナルベルの緑髪にも理解を示してくれる人だった。で、アナルベルは次第にその青年に惹かれ始める。関わるうちにお互いに惹かれ合った二人は、最終的には結婚した。
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あれから数年、アナルベルは理解ある夫と共に穏やかに暮らしている。
現在は森の中の家にて二人で生活している。
アナルベルが「自然の多いところで暮らしたい」と言って、そこに家を建てたのだ。
今、アナルベルは、日々幸福を感じている。
一方ダイガンはというと。
アナルベルと離れた直後に現れた昔の友人の女性と仲良くなりあっという間に結婚。周囲も驚くほど急な結婚であった。そうして幸せになったかと思われたのだが、後に彼女の親に隠し借金があることが発覚。その件で両家が揉め、どうしようもなくなって、最終的には離婚となった。
それからもダイガンは結婚と離婚を繰り返していた。
が、数日前、最初の妻である女性に路上で刺され、亡くなった。
女性は殺人の罪で捕まったが、起きている間ずっと「わたしだけを愛してる、一生。そう言ってくれたのに。嘘だったなんて許せない許せない許せない許せない許せない」と繰り返すだけで、どういう意図があったのかはまだはっきりしていない。
◆終わり◆