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婚約破棄されたので速やかに去ります。~そして楽しむ揚げ物ライフ~

 私の婚約者である彼アブレ・アブラモンは私より十ほど年上だ。

 背は高くすらりとしていて、髪は少なめ、肌が剥き出しになったおでこは不自然なほどてかてかしている。


 揚げ物が好きな私ではあるが、異常なほどてかったおでこは好きではない。


「急に呼んで悪いナ」

「いえ」

「実はぁ、伝えたいことがあっテナ」

「何でしょうか」


 すると彼は口角を怖いくらい大きく持ち上げた。


「婚約サァ! 破棄するかラァ!」


 彼は大きな声で言った。

 その面に浮かぶ笑みは不気味としか言い様がないようなものだ。


「君みたいナ地味で美人でない女トォ生きていくなんてサァ! 生理的に無理なンダよぉ!」


 だが、彼が婚約を破棄したいというのなら、私にとってはある意味幸運とも言える。こちらとしても彼と結ばれることを嬉しくは思っていなかったから。そういう意味では私たちは同じ気持ちを抱いているとも言えるのかもしれない。


「これ以上付き合っていられないヨォ!」

「そうですか。分かりました。では、さようなら」


 こうしてアブレとの関係は終わった。


 さてこれからどうしようか……。



 ◆



 あれから十年。


 数ヵ月前、私はこの国で初めてとなる揚げ物専門店を開いた。

 今はそれ関係の仕事で忙しい。

 現時点では問題なく営業できており利益もきちんと出ていそうだが、それを続けていくには脳がいる。


 だから私は思考することをやめない。


 今日もまた、気に入っている小さい卵の揚げ物を頬張りながら、店がより良い方向へ進んでゆく方法を考える。


 でもこの生活が苦痛かというとそんなことはなくて。

 むしろ楽しめている。

 それは、忙しさも含めての楽しさ、だ。


 前へ、前へ、少しずつでも進んでいく。


 好物である揚げ物と共に。


 ちなみにアブレはというと、あの後海外の商人と取引する仕事を始めたそうだが、海外の商人に騙されてしまったことで大損をすることとなってしまったらしく……最終的には一文無しに近い状態にまでなってしまったそうだ。


 また、ある時運悪く階段で転倒したことで腰痛持ちになってしまい、その痛みにも苦しんでいたらしい。



◆終わり◆

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