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嫌なことをしてきた人が不幸になる謎の力を持っていた私ですが……。

 思えば、幼い頃から私には不思議な力がありました。


 私に対して嫌なことをした人が不幸になる……そういう力です。


 もちろん意図して何かをしたわけではないのです。術をかけたわけではありませんし、私はただ普通に生きていただけ。にもかかわらず、私を不快にした人は不運の渦に巻き込まれ呑み込まれてゆくのです。


 近所のいじめっこたち。

 裏で悪口を言いふらしていた幼馴染み。


 学園の生徒だった時代には。


 やたらと絡んでいちゃもんをつけてきた女子生徒。

 私のペンを隠した隣の席の男子生徒。

 顔が嫌いだからと私のことをまともに扱わなかった先生。


 皆、残念な最期を迎えました。



 ◆



 そして今。


「聞いたぞ、君は呪いの女だそうだな。そういうことなら、悪いが、君とは生きてゆけない。我が一族に穢れた血を入れるわけにはいかないからな」


 婚約者アベルトはそんな風に言い、私に対してすぐ出ていくようにと言いました。


「呪うなら呪えば良い。だがそんなことをすれば痛い目に遭うのはそちらだ、それを忘れるな。俺にはお抱えの呪術士がいる、呪いくらい跳ね返してやるさ」


 彼はとても勝ち気でした。


 私はアベルトの前から消えることを余儀なくされました。


 彼が出ていけと言ったなら、私に何か言い返す権利などないのです。

 悲しいことですが、従うしかありません。


 とても傷つきましたが、私は彼の前から去ることにしました。


 一緒にいてもきっと幸せにはなれないでしょうから……お互いに……。



 ◆



 それから数年。

 私は一人の男性と結婚、今は穏やかな暮らしの中にあります。


 夫は手芸が趣味で、作った作品を販売する店も営んでいます。


 彼はとても穏やかな人。

 だから好きです。


 そういえば。


 アベルトはやはりあの後残念なことになったようです。


 婚約破棄の直後、家に泥棒が入り、犯人に出会ってしまって負傷したうえ家にあった財産を盗まれたそうで。それから傷が癒えるまで自室で寝ていたそうなのですが、今度は大雨による洪水に巻き込まれてしまったそうです。あまり動けない状態で洪水に巻き込まれた彼は危うく溺れてしまうところだったのを救助されたのですが、恐怖が大きすぎて正気を失ってしまったらしくて。洪水による怪我はなかったものの、毎晩悪夢にうなされるようになったことで寝不足になり、しかししっかり寝ることは怖くてできず、一日中うとうとぼんやりしていることしかできなくなってしまったそうです。



◆終わり◆

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