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幼馴染みの嘘を信じ込んでしまった婚約者は……。

 婚約者ポクトに呼び出され彼の家まで行くと、ポクト本人と長い髪の女性が待っていた。


 長い髪の女性、以前見たことがある。

 確かポクトの幼馴染みだと聞いたような気がするが。


「よく来たな」

「何か用でしたか?」

「実は君に言いたいことがある」


 ポクトは隣にいる女性をそっと抱き締めて。


「君は彼女を陰で虐めていたそうだな」


 ……はい?


 意味不明なのだが。

 何を言っているのか。


 幼馴染みの女性の存在は知っていたけれど、それはあくまで知っていただけであり、彼女と私は関わりはない。そもそも知り合いになってもいないし。交流したこともないと思うのだが。


 なのに虐めて?


 おかしな話だ。


「彼女から聞いた。ドレスを破いたり紅茶に虫を入れたりして、さらに、人前では関わりがないように振る舞っていたそうだな」


 ポクトはそんなことを言ってきた。


「あの……すみませんが意味が分かりません」

「何だと? 逃げる気か?」

「いえ、そうではなく。私とそちらの女性とは関わりがありませんので、虐めたことなんてありません」

「だからそれは演技なのだろう!?」

「いいえ、違います」

「嘘をつくな! この悪女!」


 私は幼馴染みの女性へ視線を向ける。


「貴女がこのような嘘を仰ったのですか?」


 すると女性は急に泣き出す。

 そしてわざとらしくポクトにすがりつく。


「お前! なんということを!」

「そちらの女性に質問しているのです」

「脅すな! 傷つけるな! 悪女め!!」


 彼は感情的になっていた。


「お前のような悪女との婚約なんぞ破棄だッ!!」


 こうして婚約は破棄となった。


 私は危うく罪深い女と言われてしまうところだったが、かつて彼の家に勤めていた青年が味方をし幼馴染みの女性についても色々証言をしてくれたことで、私は何もしていないというのが真実なのだと証明することができた。


 これでひとまず安心。

 虐めをした女にならずに済んだ。



 ◆



 あれから数年、私は現在ある男性と結婚し幸せに穏やかに暮らしている。


 ある男性というのは、かつてポクトの家に勤めていて私が悪女認定されかかった時に味方をしてくれた彼。あの一件によって親しくなり、その流れに乗るようにして私たち二人は結ばれた。


 彼は今は夢を仕事にしている。

 とても忙しそうだが、日々楽しそうに働いている。


 そうそう、ポクトらのその後について、最近になって少しだけ知ったのだが……。


 ポクトはあの後幼馴染みの女性と結婚したらしい。


 どうやら虐められたうんぬんの件で心が近づいたようだ。


 周囲は虐めうんぬんは幼馴染みの女性の嘘と気づいた。が、ポクトだけはそれが嘘だと理解できず。彼は親も親の財産も捨ててでも幼馴染みの女性と生きることを選んだそうだ。無理矢理結婚したらしい。


 だがすぐに浮気されてしまったそうだ。


 ポクトにとっては女性の「あなたを一番愛している」という言葉がすべてで、ずっとそれを信じていたそうなのだが……。いつしか妻の浮気があまりに酷くて、非常に不安になり、心がやられて……毎晩のように悪夢をみるようになってしまって……その苦痛に耐えきれず、ある朝自室にて自ら命を絶ったということである。


 一方ポクトの妻である幼馴染みの女性はというと、その後も多くの異性と関わりを持っていたがある時病気を移されてしまい、その病気が進行したことで亡くなったらしい。



◆終わり◆

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