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婚約を破棄することにした? どうぞご自由に。好きにすれば良いじゃないですか。ま、後悔しても知りませんけど。

 私とワエウーダが婚約したのは、彼の家が私の実家が扱っているある商品を欲しかったからだ。


 そのことは知っていた。

 でもそれでもいいとも思っていた。


 どのみち自分で相手を選ぶことなどできない、それならまだ比較的まともな相手と結ばれるのが理想的。そう思っていたので、ワエウーダとの婚約は嫌だとは思わなかったし、迷いなく受け入れた。


 だが。


「君との婚約は破棄とすることにした!」


 ワエウーダは突然そんなことを言ってきた。


 それはとても激しい雨の日で。

 空が私の心を表現しているかのようであった。


「なぜ? 何か理由があるの?」

「好きな人ができてしまったから」


 聞いて呆れた。

 そんなことが理由だなんて。


 だが、それが理由なのだとしたら、私が何か言ったところできっと無意味なのだろう。


「そう。……分かった。じゃあ私は去るわ」

「ありがとう」

「でも、商品の件はなかったことになるわよ。それでいいのね?」

「いい! もちろん! この世は愛がすべてだよ」


 その日、私たちの婚約は霧と化し去った。


 そして正式な手続きから数日で家同士の関わりもおおよそ終わり、商品を彼の親に渡すという話も白紙となった。


 あれから数ヵ月。


 私は今、実家で両親と共に穏やかに暮らしつつ、絶滅しかけている魔獣の観察や保護の活動をしている。


 ワエウーダの実家はあの後大変な目に遭ったらしい。

 うちからの商品が急に入らなくなったから。

 それによって客と揉めることになり、大問題に発展させられた案件まであるそうだ。


 今では彼の家は借金返済に追われるような状態だとか……少々気の毒には思うが、まぁ、ワエウーダ自身が最初の約束より愛を優先したのだから私は関係ない。


 ちなみにワエウーダ本人はというと、親から家から追い出され、一人になってから女性と結婚するも女性の親や親戚から失礼なことを言われたりいじめのようなことをされながら生きているそうだ。


 だが、それもまた、彼が望んだ道。


 彼は己の愛を最優先として私を切り捨てた。そんな彼にとっては、愛する人といられる今が幸せなのだろう。いや、そうでなくてはおかしい。愛さえあればそれでいい、彼はそう言うべきだ。


 もっとも、口出しはしないけれど。


 ま、せいぜい幸せに生きることだ。



◆終わり◆

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