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婚約破棄ですって? まぁべつに、私を嫌っている人と生きていく気はありませんし、構いませんよ。

「君みたいな女、だいっきらいだ! よって、婚約は破棄とするッ!!」


 色鮮やかな刺繍が施された見るからに高級そうな上着をまとっている婚約者ヴェールガーは、今日、何の前触れもなかったのに突然そう宣言した。


「婚約破棄、ですって?」

「ああそうだ! もう君とは無関係になりたい!」


 彼は感情的になっていた。

 まともな説得や会話はできそうにない。


「君みたいな優しくない女はだいっきらいだ! それに! 僕にはふさわしくない! 早く消えてくれ!!」


 そこまで言うか。


 なら従おう。

 私とて、夫から嫌われながら生きるのはごめんだ。


「分かったわ。じゃ、私はこれで去るわね。さようなら、ヴェールガー」


 私はそう言って、彼の前から去ることを選んだ。


 彼と離れても私が失うものは何もない。

 それならもうどうにでもなってしまえ。


 関係はここまで、だ。



 ◆



 あれから数年、私はヴェールガーではない彼とはまったく無関係の男性と結婚した。


 夫となっている彼は少々過剰に綺麗好きなところがあるが、それ以外に関しては寛容で、元々は他人だった私のことも受け入れようとする心の広さがある人だ。


 それに、話も面白い。


 まったく別の環境で育った私と彼。けれども心は通じ合っている。互いの知らない世界を伝え合い、互いの知らない刺激を与え合うことができる、そんな関係。私はそれを愛おしく思っているし、彼も楽しいと言ってくれている。


 これからも彼と共に生きてゆけたら。


 心の底からそう願う。


 ちなみにヴェールガーはというと。 


 あの婚約破棄の真相が世に出たことで「自分勝手な理由で婚約を破棄するような人」という印象が皆についてしまい、それによって社会的な評価を下げることとなってしまったそうだ。


 その影響は彼の親の仕事にまで至り。

 彼の父親も仕事において損をすることになってしまったらしい。


 当のヴェールガーは、今は、栗拾いの手伝いで少しのお金を稼ぐ暮らしをしているそうだ。


 もっとも、今の彼の仕事が何かなど興味はないが……。



◆終わり◆

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