表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/191

魔力を持っていたために悪い魔女などと言われ婚約破棄されました。いや、それ、完全に誤解ですよ……。

「貴様が悪い魔女だとは思わなかった! だが、そうと判明した以上、この関係を保つわけにはいかない! よって、婚約は破棄とする!!」


 婚約者ブルガリオンはある日突然大声で婚約破棄を宣言した。


 いやいや、悪い魔女、て。


 それは完全に誤解だ。


 確かに私は魔力を持っている。そういう意味では魔力を持っていない人間とは少し違っているのかもしれない。が、魔力を持っている者が皆悪い魔女なわけではない。そもそも、魔女と呼ばれるような人たちはもっと大きな力を持っている人だし、魔女だからといって全員が悪いわけではない。むしろ、その力で社会に貢献している人だっている。


 彼がやっていることは、己の無知を晒すだけの愚かな行為だ。


「悪い魔女、というのは、誤解です」

「はぁ?」

「私はただ若干魔力を持っているだけ。魔女と呼ばれるほどの力はありませんし、悪事を働いてもいません」

「言い訳をするな! みっともないぞ!」

「いえ。私は事実を述べているだけです」


 すると彼は顔を真っ赤にする。


「うるさい! 黙れ魔女め! 母が言っているんだ『魔力を持つ女など魔女、関わるな、害しかない』と!」


 あぁそういうことか……少し納得。


 ブルガリオンの母親は私を良く思っていないのかもしれない。


 もしそうだとしたら、魔力うんぬんの件は、彼女にとっては嬉しい話だっただろう。

 私をはねのけるそれらしい理由ができるから。

 もっとも、分かる人からすればおかしな話で、これまた無知を晒しているだけなのだけれど。


「お母様がそこまで仰るなら、承知しました。私は去ります」

「最初からそうしろよ」

「ではこれにて。……さようなら」


 こうして私たちの関係は終わった。


 でも仕方ない。

 この婚約破棄はやむを得ないことだ。


 ブルガリオン自身の気持ちだとしてもこちらの言葉で変えるのは難しいのだから、彼の母親の気持ちを変えることなどもっと難しいことは間違いない。こちらが努力して理解してもらおうとしたところで揉め事が大きくなるだけだろう。


 ならば関わらず立ち去るほうが効率的。


 悪い魔女などと雑な理解をされるのは不愉快だが、私は私の道を行くことを選ぶ。


 ◆



 婚約破棄後色々あって、私は、生まれ育ったこの国の王子の妻となった。


 きっかけは王子が魔力の研究をしていたこと。

 持っていた魔力が私を彼に出会わせてくれた。


 これまで「魔力を持っていて良かった」と思える機会はあまりなかったが、この件で初めてそう思うことができた。


 今は王子の妻として相応しく振る舞えるよう日々勉強している。


 ちなみにブルガリオンはというと、先日、ついに捕まった。というのも、私と王子の関係が世に出てから、彼は毎日のように私に対して嫌がらせをしてきていたのである。おかしなものを贈ろうとしてきたり、嘘を言いふらそうとしたり、と、とにかく絡んできた。彼は私が王子の妻となり地位を得るのが納得できなかったようなのだ。


 とはいえすぐには痛い目には遭わせなかった。


 危険を回避しつつ彼のほうから去っていくのを待った。


 だがあまりに酷くて。

 エスカレートする嫌がらせに耐えられず、夫に相談し、公園を不法に占拠しているタイミングで捕らえることになった。


 ブルガリオンは今は牢の中。


 冷めきった残飯を食べていることだろう。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ