婚約破棄を告げられたと同時に始まる、謎の人生。~まぁこういうのもあり……ですかね?~
その日の天気は晴れ。
空は青く澄み、光に満ちて、とても美しい。
「ルイナ、君は本当に可愛げがないな。少しくらい俺に好かれるよう努力したらどうだ? あぁいや無理か。プライドの高い君のことだ、俺に好かれるよう頑張るくらいなら死を選ぶだろうな」
妄想だ。
私はそんな人間ではない。
「ま、そういうことで、そんな女とやっていくのは無理だから……君との婚約は破棄とする」
婚約者エルヴィンがそう言った、刹那。
大地が震え出す。
足下が激しく震えることに衝撃を受けたエルヴィンは「な、何なんだぁ!?」などとひきつったような情けなさの塊のような変にかん高い声を漏らしている。
その数秒後。
大きな爆発音が響いた。
そして私は意識を失う……。
◆
次に目覚めた時、私は知らない場所にいた。
「やぁ、起きたんだね!」
声をかけてくるのは見知らぬ少年。
絵に描いたような金髪碧眼だ。
白い布切れをまとっていて、胸には星形のペンダントが光る。
「君は今日から神様になったんだ! 僕はそのお手伝い! よろしくね!」
意味が分からなかった。
その後、金髪碧眼の彼から話を聞いたのだが、エルヴィンは既に亡くなったらしい。
大地が揺れる現象はあの後すぐに収まったそうなのだが、それからもあの地域は毎週のように災害に見舞われるようになり、エルヴィンはある時の大きな水害で好きだった人を失ってしまったらしい。
そのショックによって正気を失った彼は、愛する人を取り戻したいと願い過ぎて悪魔と契約してしまい、操られるままに人間を襲う存在になってしまったらしくて。
最終的には武装した町の人たちに一斉に襲いかかられ、命を落としたそうだ。
大切な人を失ったことは気の毒に思う。
が、無関係の人たちを傷つけることは許されない。
ある意味自業自得だろう。
◆
あれから五千年。
私は今も神の一人として世を見守りながら生きている。
金髪碧眼の彼は今も隣にいる。
心強い味方だ。
「今日はいいことあるといいね!」
「そうね」
「あ、そうだ。この前言ってた例の国の話だけど……」
こんな未来が待っているとは思わなかったけれど、案外悪くないのかもしれない。
◆終わり◆