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婚約破棄されて貴方が嘘つきだと知りました。

「きみとの婚約は本日をもって破棄とする」


 婚約者ボーマンデンは知らない女性を傍らに置きながらそう告げてきた。


「理由は……そちらの女性ですか?」

「まぁそういったところだな。彼女のほうがきみより美しい、それだけさ」


 確かに可愛らしい雰囲気の女性だ。


 でも……なんとも言えない気持ちにならざるを得ない。


「あの! すみません! わたし、そんなつもりじゃなくて……でも、わたし、昔から男性に愛されてしまう体質なんです……! その……だから、今回も。すみません!」


 女性はわざとらしくそんなことを言ってきた。


 呆れる。

 人の男を盗っておいてよくそんなことが言えたものだ。


 でも私にも非はある。


 私の非は、ボーマンデンが口にしていた「可愛い」とか「一緒にいたい」とかいう言葉を信じてしまったこと。

 本当なら信じるべきではなかった。

 そんな甘い言葉が真実なわけがない、そう分かっていれば、こんなことにならずに済んだのだ。


「いえいえ。では私は去りますので。さようなら」


 嘘つきだと気づけなかった私にも問題がある。


 だから去ろう。


 嘘つきは彼女に譲ろうと思う。


 その後私はボーマンデンから少額ながら慰謝料を支払ってもらった。

 そして私たちの関係は終わった。


 彼のような人を信じてしまったことへの悔しさはあるが、まぁ、それはそれで過ぎたことだ。



 ◆



 婚約破棄から数年が経った。

 私は看護婦見習いとして働いている。


 あの一件以来、私は、男性を信じることはなくなった。が、今はやりがいのあるこの仕事を誇りに思っているし、そこに生き甲斐を感じている。毎日忙しく、たまには投げ出したくなることもあるけれど、人の役に立てているというのは嬉しいこと。


 これからもこの仕事を続けていきたい。

 そしてもっと多くのことができるようになりたい。


 向上心が幸せをくれる。


 ちなみにボーマンデンはというと、私と離れてから数週間も経たないうちにあの女性と婚約したらしい。しかし、結婚する直前になってから、女性に他の男が複数いたことが発覚。ボーマンデンはその事実によって絶望し、衝動的に崖から身を投げて落命してしまったそうだ。


 また、相手女性も後に、昔付き合っていた男に襲撃されて亡くなったらしい。


 世の中色々物騒だなぁ、と、思った。



◆終わり◆

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