好まれない黒髪令嬢は神に救われ幸せになる。
エリナ・フォルイセグはとある家の長女。
しかし彼女は黒髪を持って生まれた。
艶のあるとても美しい髪、しかしながらこの国においては黒髪は珍しく、また、良いものとは捉えられていない部分が大きくて。
彼女もまた、周囲から良く思われずに育った。
「あぁなんて不気味な子! 災厄を呼ぶような髪!」
実の親からでさえ、そんな風に言われて育った。
控えめな性格の彼女は親が連れてきた男性ポテと婚約。
そして婚約と同時に彼との同居を開始。
事実上、実親が家から追い出したという形である。
しかしエリナは、ポテやその母親や姉からも虐められた。
「あなたってほーんと不気味ね! 特にその髪! 見るだけで不快になるわ!」
「不幸になるために生まれてきたかのようねぇ」
そんなある日のこと。
「エリナ、悪いが、君との婚約は破棄とすることにした」
彼女はポテから急に告げられる。
「君のような黒髪の女性を妻にしたら一家にも不幸が降りかかるかもしれない、と、母や姉が気にしている。だから、やはり、もう君とは生きてゆけない。すまないが、ここで去ってくれ」
その日、エリナは彼の家から追い出された。
だがエリナには行ける場所はなかった。
当然ポテのところにはいられない。何を言っても無駄、相手なんてしてもらえない。かといって実家へも戻れない。普通であれば実家へ帰る選択は一つだが、彼女の場合はそれも無理。実親にも嫌われているから。
八方塞がりとなってしまった彼女は、悲しみの中、自ら命を絶つことを選んだのだが――。
命を絶とうとしたエリナを救ったのは――とある神であった。
神は彼女に穏やかに暮らせる国を与えた。
いや、性格には、黒髪でも問題なく生きられる場所へ彼女を連れていったのだ。
それからというもの、エリナは幸せに暮らすことができるようになった。
「綺麗な髪ね~」
「どうやったらそんな綺麗にできるの? え、生まれつき? すごーい!」
彼女は今、その髪を皆から褒められている。
そして、そのこともあって、彼女は段々自分の髪を好きになりつつある。
一方、エリナを救った神はというと。
彼女を傷つけてきた者たちに天罰を下した。
エリナの両親は突如謎の病かかり、医師に頼んで治療を受けるも一切良くならず、みるみるうちに衰弱。その流れのまま落命するに至った。発症から数ヵ月のことだった。
ポテはある日の晩、愛している女性と歩いている時に落雷に遭い、女性を失ってしまう。
彼は何とか生き延びたけれど。
心を病み、女性を失った瞬間の悪夢ばかりみてしまうようになっている。
ポテの姉は弟が心を病んでいることを理由に婚約者から婚約破棄を告げられ、ショックを受け、衝動的に身を投げ落命。
ポテの母親は、子を失ったショックによって体調を崩し、今は寝たきりに近い状態となっている。
◆終わり◆




