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転生した瞬間婚約破棄されました。~何がどうなっているのかよく分かりませんが、婚約者の口が悪いことは分かりました~

 現代社会を生きる平凡な女性だった私は、ある晩路上で不審者に刃物で刺され、その生涯を終えた——はずだったのだが。


 気づけば知らないところにいて、私は、私ではない姿になっていた。

 それに気づいたのはたまたますぐ傍に姿見があったからである。

 長い金髪、すらりと伸びた背筋、整った形の高い鼻に長い睫毛が華やかな目もと——以前のもっさりした私とは明らかに別人。


 そして目の前には一人の青年。


 背の高い人だ。

 でも知り合いではない。


 私の記憶の中にこのような青年は存在しない。


「フルベリゼ、君との婚約は破棄とする!」


 彼はいきなりそう告げてきた。


 ……婚約していたのか?


 どうやら私は私でなくなったらしい。

 だって私はずっと一人だった。

 学生時代からずっと異性と関わりのなかった私だ、婚約者なんているわけがない。


「あの……すみませんが、意味が」


 この婚約者は、きっと、この身体の女性の婚約者なのだろう。


「うるさいな! ごちゃごちゃ言うなよ、さっさと消えろ! 視界から今すぐ消えろよ!!」


 口が悪いなぁ。


 こんな人が婚約者だなんて。

 この女性も気の毒だなぁ。


「君は前からいちいち鬱陶しいんだよ。拒否されたならとっとと去れよな。それとも何だ文句でもあんのか?」

「いえ……では、私は去ります」

「あぁ。最初からそうしてくれよ、まったく」


 その後私はフルベリゼとして生きてゆくことになった。

 一応説明はしたのだが、私が元は別の世界にいた人間だということは結局誰も信じてくれなかったのだ。


 フルベリゼは記憶をなくした——そういうことになっている。


 だが、こういう人生も悪くないのかもしれない、と思えている私もいる。


 ここにいれば一人じゃない。

 温かい家族がいて、友人も気にかけてくれて——毎日とても楽しい。



 ◆



 あれから数年。

 私は領地持ちの家の長男である男性と結婚した。


 彼とは初めて出会った日に惹かれあって。それから色々なことを話して仲を深め、気づけば結ばれるところにまで至っていた。ちなみに、私としては初めての恋であった。初恋は実らない、ということはなかった。


 今はこの世界について色々学んでいるところだ。


 そういえば。


 私がここへ来てすぐの時に婚約破棄してきたあの男性は、あの後、趣味の山歩きの最中に獣に襲われ亡くなってしまったそうだ。



◆終わり◆

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