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婚約破棄された私ですが幸せを掴むことはでき、今では穏やかに暮らせています。

「伝えるのが急になったこコトハ悪かったとは思うガ……お前との婚約は破棄することにしたカラ」


 婚約者ブルグレステンからそんなことを告げられたのは、穏やかな日差しがさす昼下がりのことだった。


 天気は悪くなく気候も過ごしやすい。

 とても良い日だ。

 ただ、告げられた言葉は嬉しくないものであった。


「ええと、何か事情が?」

「これ以上話すコトハ何もないカラ。早く俺の前から去ってくレ」

「理由があるのではないのですか?」

「理由? あるコトハあるが、言わない方が良いと思うのデ言わなイ」


 ええ……。


 だが、彼がそう言うのなら、聞かない方が良い理由なのかもしれない。

 知らない方が良いことというのがこの世に存在していることは事実だ。


「そうですか……分かりました。もやもやしますが、まぁ、聞かない方が良いこともあるのでしょう。では……私はこれで。失礼させていただきます。……さようなら」


 私はブルグレステンの前から去ることを選択した。


 一度は成立していた婚約が破棄されてしまうというのは残念なことだ。それも大喧嘩になったとかならともかく。何が問題だったのか分からないまま離れることになる、というのは、何とも言えない気分にならざるを得ないしもやもやしてしまう。


 が、受け入れるしかないのなら……やむを得ない、か。


 長い金髪を風に揺らしながら実家へ帰る。



 ◆



 ブルグレステンとの婚約は破棄となった一件から数年。

 私は今、結婚して、夫と共に暮らしている。


「今日あのクッキー買ってきましたよー」

「え! 本当に!?」

「はい。これですよねー?」

「うわあぁぁ……! クリクッキー! これだよこれ、これが好きなんだ、ありがとう!!」


 夫である彼は少々子どもっぽいところがあるけれど、悪質なところはないし、基本的に善良だ。


 それに、言いたいことがある時は言っていい、と最初から言ってくれていて。

 そこに安心感がある。


「食べ過ぎないでくださいねー」

「うん! 気をつける! って言いつつ食べちゃうんだけどなぁ……自制する自信ない……」


 こうして近い距離で暮らしていれば言いたいことや伝えたいことが発生することも少なくはない。共に生きる以上、時には意見を言い合うことも必要となってくる。


 だが、これまでの人生を振り返ると、意見を伝えると怒ってしまう男性も少なくはない。


 けれども彼はそうでない。

 とてもありがたい。


「あ、そうだ。一枚食べる?」

「いいんですか?」

「もちろん! 買ってきてくれたお礼だよ」

「じゃあいただきます」


 そうそう、これは最近になってとあるルートから入手した情報なのだが、ブルグレステンは私との婚約を破棄するなり別の女性を自宅に連れ込んでそのまま結婚したそうだ。


 だが、後に女性の家柄に問題があることが発覚。


 彼は親や親戚から凄まじい反対を受け、結局、その女性とは離れることを選んだそうだ。


 そして女性は怒った。

 愛していると、幸せにすると、そう言ったのに……と。


 それから数日が経ったある夜。


 女性はブルグレステンの自宅へ忍び込み、まずはブルグレステンの両親と妹を寝ている状態のまま殺害。次にブルグレステンのところへ行って三人の亡骸を見せる。で、彼に対してやり直すよう迫る。が、怯えてしまっているブルグレステンに拒否され、女性は激怒。彼女はその場で油と火を放ってすべてを赤に染めたそうだ。


 世の中恐ろしい人もいるものだなぁ、と思った。



◆終わり◆

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