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婚約破棄されましたが理由が理由なので深刻には捉えないことにしました。

 その日、私は、それが当たり前であるかのような顔つきで告げられてしまった。


「お前との婚約、破棄することにしたから」


 ……そんな風に。


 確かに想い合っての婚約ではなかった。ただ、それでも、私は彼と共に生きてゆくことを決心していた。決まったのだからその方向で前向きに考えようと思って、抗うことはしなかった。協力して生きてゆこうと思っていたのだ。


 でも彼は違って。


「愛していないお前と結婚なんぞ絶対に無理だわ」


 婚約者の彼は何の躊躇いもなくそんなことを口にする。


 どうしてそんなことを言えるのか。

 理解できない。

 そもそも、そういうことならなぜ最初に断らなかったのか。


 ……いや、もう考えるのはやめよう。


「俺の相手はもっと美人じゃねえとな」


 何を言われても無視しよう。

 これ以上彼とは関わらない。


「そうですね。では……さようなら」


 私は婚約破棄を受け入れ彼の前から去ることを選んだ。


 なぜか? 簡単なこと。ここで粘っても意味などないから、それだけ。


 彼は私を嫌がっている、もはやこちらが何を言おうとも無駄だ。



 ◆



 あれから数年。

 私はこの国を守る兵士として生きている。


 婚約破棄から色々あって、気づけば、私はこんなところへ来ていた。


 だがこれも運命だろう。

 こうなる定めだったのだろう。


 でも後悔はしない。むしろこの道を選んだことを良かったことだと思っている。もちろん辛いこともあるが嬉しいことだってあるから。すべての人にとって良い道ではなくとも、私にとってはこれが良い道だったのだ。


 そういえば。


 元婚約者の彼はあの後気に入った美人の女性と結婚したそうだ。だが、彼女の家の方が身分が上だったことから女性の親族や周囲から悪口を言われたり虐められたりしてしまったらしくて。彼はそれによって心を病むこととなったそうだ。


 身分うんぬんで虐められたのは気の毒には思うけれど……でも、私が彼を可哀想に思うかといえばそうでもない。


 だって彼はかつて私を切り捨てた。

 それも一方的に。


 だから私は彼を『可哀想』とは捉えられないのだ。


 ま、私はこれからも私の道を行こうと思う。



◆終わり◆

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